アモキシシリン 医薬品化学 91回薬剤師国家試験問4

91回薬剤師国家試験 問4
β-ラクタム系抗生物質アモキシシリンに関する記述の正誤を判定してみよう。

 

アモキシシリンに関する記述 薬学化学 91回薬剤師国家試験問4

 

a *印不斉炭素の絶対配置はRである。

 

b アモキシシリンは細菌の細胞壁合成酵素と結合し、抗菌活性を発現する。

 

c β-ラクタム環はアルカリ性条件で側鎖アミド基と比較して加水分解されにくい。

 

d 赤外吸収スペクトルにおいて3種のカルボニルのうち、β-ラクタム環のカルボニルが最も高波数に強い吸収を示す。

 

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91回薬剤師国家試験 問4 解答解説

 

◆ aについて
a × *印不斉炭素の絶対配置はRである。
→ 〇 *印不斉炭素の絶対配置はSである。

 

不斉中心の絶対配置の判別の仕方については、下記のリンク先を参照
不斉中心の絶対配置の判別について

 

 

アモキシシリンに関する記述 薬学化学 91回薬剤師国家試験問4

 

CのHが奥にあり、@ABが反時計回りに並んでいるのでSである。

 

 

◆ b,cについて
b 〇 アモキシシリンは細菌の細胞壁合成酵素と結合し、抗菌活性を発現する。

 

c × β-ラクタム環はアルカリ性条件で側鎖アミド基と比較して加水分解されにくい。
→ 〇 β-ラクタム環はアルカリ性条件で側鎖アミド基と比較して加水分解されやすい。

 

β-ラクタム系抗生物質の作用は下記のリンク先を参照
β-ラクタム系抗生物質の作用機序

 

 

◆ dについて
d 〇 赤外吸収スペクトルにおいて3種のカルボニルのうち、β-ラクタム環のカルボニルが最も高波数に強い吸収を示す。

 

赤外吸収スペクトルでは、一般に、結合次数が大きいほど、高波数側にピークが現れる。
本問のカルボニルの比較では、C=Oの共鳴による二重結合性の変化がポイントである。

 

下記のアモキシシリンの@〜Bのカルボニルの赤外吸収を比較する。

 

アモキシシリンに関する記述 薬学化学 91回薬剤師国家試験問4

 

 

@ 鎖状アミドのC=O
鎖状アミドのC=Oは隣接する窒素との間で共鳴することにより二重結合性が小さくなるため、C=O伸縮振動の中では比較的に低波数側の1600〜1680cm-1にピークが現れることが多い。

 

 

A β−ラクタムのC=O
4員環の環状アミドであるβ−ラクタムのC=Oは窒素と共鳴しにくく二重結合性が維持される。
また、4員環でひずみが大きいため、C=O伸縮振動の中では比較的に高波数側の1770〜1790cm-1にピークが
現れることが多い。

 

 

B カルボン酸のC=O
カルボン酸のC=Oは隣接する酸素との間で共鳴することにより二重結合性が小さくなるが、鎖状アミドに比べて二重結合性は大きく、1700〜1725cm-1に現れることが多い。

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