ラベプラゾールNa製剤 粉砕した後服用することによる問題 105回薬剤師国家試験問206
105回薬剤師国家試験 問206
98歳女性。体重30kg。逆流性食道炎のため、薬物アが処方された。
(処方)
薬物ア錠10mg 粉砕1回0.7錠(1日0.7錠)
1日1回 朝食後 14日分
薬剤師が処方監査を行ったところ、粉砕して服用すると問題があることが判明したため、処方の変更を医師に提案することとなった。
問206
薬物アが生体内において受ける変化(A〜D)に関する記述のうち、粉砕した後に服用すると問題が起こる理由と深く関連しているのはどれか。1つ選びなさい。
1 Aの反応が胃内の環境において加速される。
2 Bの過程で不斉中心が消失する。
3 Cの過程で硫黄原子上における求核置換反応が進行する。
4 Dの過程で薬物が酵素のシステイン残基と反応する。
5 A〜Dの反応が胃壁細胞のプロトンポンプ付近で起こる。
105回薬剤師国家試験 問206 解答解説
薬物アを粉砕して服用することの問題点は、下記の1である。
1 Aの反応が胃内の環境において加速される。
設問で示された薬物アの生体内の反応より、
薬物アは酸で活性化され、
何らかの酵素とジスルフィド結合を形成することで薬効を発揮し、
逆流性食道炎が治療されると考えられる。
これより、酵素はプロトンポンプで、薬物アは従来型のプロトンポンプインヒビター(PPI)だとわかる。
また、薬物アは下記の通り従来型のPPIの構造的特徴を有するため、構造式から従来型のPPIだと推測することもできる。
従来型のプロトンポンプ阻害薬(PPI)の構造の特徴については下記のリンク先を参照
PPIの構造的特徴
薬物アは従来型プロトンポンプインヒビター(PPI)のラベプラゾールナトリウム(パリエット)であり、プロドラッグとして小腸から吸収され、血中から胃壁細胞に到達し、その分泌小官に蓄積して酸によって活性体となり、H+-K+ATPase(プロトンポンプ)のシステイン残基のチオール基とジスルフィド結合(共有結合)を形成する。これにより、プロトンポンプの機能を不可逆的に阻害し、胃酸の生成を抑制する。
ラベプラゾールナトリウムはプロドラッグとしてそのままの形で小腸から吸収されなければならないが、胃酸にさられると設問のAの反応が加速し、急速に分解されてしまうので、胃酸にさらされないよう腸溶錠にしてある。
ラベプラゾールナトリウム錠を粉砕してしまうと、製剤の腸溶性が失われてしまい、ラベプラゾールナトリウムは胃酸によって設問Aの反応が加速し、分解が進み、結果、薬効が失われてしまう。
なお、ラベプラゾールナトリウム(パリエット)に限らず、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker : P-CAB)のボノプラザンフマル酸塩(タケキャブ)を除き、他のプロトンポンプインヒビターも全て同様のことから腸溶錠となっている。
★他サイトさんの解説へのリンク
第105回問206,207(e-RECさん)