タクロリムス 放線菌生産マクロライド 106回薬剤師国家試験問109
106回薬剤師国家試験 問109
医薬品ア〜ウについて、正しい記述はどれか。2つ選びなさい。
1 放線菌によって生産されるマクロライドである。
2 真菌によって生産される環状ペプチドである。
3 Z配置の二重結合をもつ。
4 ピロール環をもつ。
5 ヘミアセタール構造をもつ。
106回薬剤師国家試験 問109 解答解説
◆ 1について
1 〇 放線菌によって生産されるマクロライドである。
環状エステルをラクトンと呼び、大環状ラクトン構造を有する化合物をマクロライドと呼ぶ。
Aは放線菌によって生産されるマクロライドのタクロリムスである。
タクロリムスは免疫抑制薬として使用され、
移植における拒絶反応及び移植片対宿主病(graft versus host disease)の抑制、関節リウマチ、ループス腎炎、
難治性の活動期潰瘍性大腸炎、多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎、重症筋無力症、プロトピック軟膏としてアトピー性皮膚炎、点眼として春季カタルに適応される。
タクロリムスの作用機序について、
T細胞受容体等からのシグナル伝達を介した免疫亢進作用に重要な酵素としてカルシニューリンがある。
タクロリムスは、イムノフィリンのFKBPタンパク質と結合することで、カルシニューリン/NF-AT系を抑制することによりT細胞の活性化を抑制する。これによりIL-2やインターフェロンなどのサイトカインの産生が抑制され、細胞障害性T細胞の誘導も抑制されるので、免疫抑制効果が得られる。
◆ 2について
2 × 真菌によって生産される環状ペプチドである。
ペプチドとは2つ以上のアミノ酸がペプチド結合によりつながったものを指すが、Aはそのような構造を持たない。
なお、真菌によって生産される環状ペプチドの医薬品として、下記のシクロスポリンがある。
シクロスポリンは免疫抑制薬として用いられており、その作用機序は下記の通り。
「シクロスポリンはT細胞においてイムノフィリンのシクロフィリンと複合体を形成し、T細胞活性化のシグナル伝達において重要な役割を果たしているカルシニューリンに結合し、カルシニューリンの活性化を阻害する。これによって脱リン酸化による転写因子NFATの細胞質成分の核内移行が阻止され、インターロイキン-2に代表されるサイトカインの産生が抑制される。
シクロスポリンの作用機序は直接的な細胞障害性によるものではなく、リンパ球に対し特異的かつ可逆的に作用し、強力な免疫抑制作用を示す。
シクロスポリンは主にヘルパーT細胞の活性化を抑制するが、サプレッサーT細胞の活性化を阻害しないことが示されている。」
◆ 3について
3 × Z配置の二重結合をもつ。
→ 〇 E配置の二重結合をもつ。
詳細は下記のリンク先を参照
タクロリムスのアルケンの立体化学 106回問109の3
◆ 4,5について
4 × ピロール環をもつ。
→ 〇 ピペリジン環を持つ。
5 〇 ヘミアセタール構造をもつ。
詳細は下記のリンク先を参照
タクロリムスのヘミアセタール構造 106回問109の4,5
★参考外部サイトリンク
タクロリムス(日本薬学会さん)
★他サイトさんの解説へのリンク
第106回問109(e-RECさん)