108回薬剤師国家試験問207 味覚異常に最も関連するブシラミンの性質
108回薬剤師国家試験 問207
70歳男性。1ヶ月前より両手の関節の痛みと腫れが出現し、家族とともに病院の整形外科を受診し、医師より精密検査のための入院を勧められた。検査の結果、軽度の関節リウマチとの診断を受けた。メトトレキサートによる治療を開始したが、肝機能障害が出現し、以下の処方へ変更となった。
2週間後、薬剤師が服薬指導で患者の病室を訪問したところ、「食事が美味しくない、味があまりしない。」との訴えがあり、食事の摂取量も減少していることが分かった。薬剤師はブシラミン錠による薬剤性味覚異常の可能性を考え、医師へ血清亜鉛濃度の測定を依頼した。
臨床検査値:血清亜鉛 65ng/dL(基準値:80〜130ng/dL)
医師は臨床検査値の結果を踏まえ、以下の処方を追加した。
問207(物理・化学・生物)
この患者の味覚異常に最も関連するブシラミンの性質はどれか。1つ選びなさい。
108回薬剤師国家試験 問207 解答解説
正解は4の「キレート作用をもつ」である。
本患者の味覚異常は亜鉛欠乏によるものであり、
その原因として、亜鉛にブシラミンが配位してキレート錯体となり、亜鉛の吸収が低下したことが考えられる。
金属イオンに非共有電子対を配位して配位結合を形成する分子やイオンを配位子という。
配位子の構造中で非共有電子対を有し配位結合を形成する原子を配位原子という。
配位子が有する配位原子の数を配座数という。
配座数が二座以上の配位子が、金属に対して2つ以上の配位結合を形成し、環構造となっている錯体をキレート錯体という。
ブシラミンは2つのチオール基と1つのカルボキシル基を有し、配座数が二座以上なので、
金属と複数の配位結合を形成し、キレート錯体となる。
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108回問206,207(e-RECさん)