ホスアプレピタントと同様な目的で開発されたプロドラッグ 105回薬剤師国家試験問209
105回薬剤師国家試験 問209
65歳男性。がんで入院中。当初、医療チームの方針として、アプレピタントカプセルを制吐剤として投与することが計画されていたが、口内炎が悪化したため、ホスアプレピタントの点滴静注への変更について再度検討することとなった。
問209
アプレピタントからホスアプレピタントが創製されたのと同様な目的で開発されたプロドラッグはどれか。1つ選びなさい。
105回薬剤師国家試験 問209 解答解説
正解
アプレピタントからホスアプレピタントが創製されたのと同様な目的で開発されたプロドラッグは、
4のクロラムフェニコールコハク酸エステルナトリウムである。
以下、詳細
ホスアプレピタントは、アプレピタントの窒素原子にリン酸基を導入することにより、水溶性を向上させ、注射剤として点滴静注できるようにした。
ホスアプレピタントは静脈内に投与された後、脱リン酸化酵素によりリン酸基が外れ、活性体のアプレピタントとなるプロドラッグである。
同様に、水溶性を向上させて注射剤として投与可能とする目的で開発されたプロドラッグは、4のクロラムフェニコールコハク酸エステルナトリウム(クロロマイセチンサクシネート)である。
この薬物は、クロラムフェニコールをコハク酸エステルとした後、コハク酸のカルボキシル基をナトリウム塩とすることで、水溶性を向上させている。体内で代謝されてクロラムフェニコールとなるプロドラッグである。
他の選択肢については以下の通り。
◆ 1について
オセルタミビルは、活性本体のカルボキシ基をエチルエステル化することで脂溶性を向上させ、経口吸収性を高めている。消化管から吸収された後、肝臓のカルボキシルエステラーゼにより加水分解されて活性本体となるプロドラッグである。
オセルタミビルリン酸塩(タミフル)の活性体はヒトA型及びB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害し、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制する。
◆ 2について
バラシクロビル(バルトレックス)は、アシクロビルのバリンエステルとすることで、
小腸のペプチドトランスポーターを介して吸収されるようになり、
経口吸収性が高まることを意図している。
バラシクロビルについては下記のリンク先を参照
バラシクロビルの構造と性質 104回問213
◆ 3について
ドカルパミン(タナドーパ)は、ドパミンのカテコール基及びアミノ基を保護することで,消化器及び肝臓におけるドパミンの初回通過代謝を軽減し、経口投与を可能としたプロドラッグである。効率的,持続的に血漿中遊離型ドパミン濃度を上昇させる。
ドカルパミン(タナドーパ)は、ドパミンDA1受容体刺激及びアドレナリンβ1受容体刺激により、心収縮力増強作用,腎血流増加作用・尿量増加作用,末梢血流量増加作用を示すが、血圧・心拍数にはほとんど影響を与えないと考えられており、循環不全に用いられる。
◆ 5について
ロキソプロフェンナトリウムは、フェニルプロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)であるが、消化管障害の軽減を目的に創製されたプロドラッグである。
胃粘膜刺激作用の弱い未変化体(ケトン体)のまま消化管より吸収され、その後、速やかにカルボニル還元酵素によりケトンが還元され、プロスタグランジン生合成抑制作用の強い活性代謝物trans-OH体となって作用するプロドラッグである。
★他サイトさんの解説へのリンク
第105回問208,209(e-RECさん)