セフジトレンピボキシルの構造と性質 102回薬剤師国家試験問210,211
102回薬剤師国家試験 問210−211
1歳男児。耳鼻科を受診し中耳炎と診断され、以下の薬剤が処方された。
母親が処方箋を持参し、薬局を訪れた。
問210
この薬剤についての母親への説明として適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 症状の有無にかかわらず、5日間は飲み続けてください。
2 まれに痙れんしたり、意識を失うようなことがありますので、その際は直ちに受診してください。
3 下痢が起こることがありますが、よくある副作用なので心配ありません。
4 尿が赤くなることがありますが、心配ありません。
5 甘味がつけてあり、苦みを感じることはありません。
問211
セフジトレンピボキシルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 ペネム骨格を有している。
2 β-ラクタム環のカルボニル基の炭素の求電子性は、一般的な鎖状アミドのカルボニル基の炭素に比べて低くなっている。
3 細菌中のペプチドグリカン合成酵素との間で、β-ラクタム環の開環を伴って共有結合を形成することにより、細胞壁の生合成を阻害する。
4 セフジトレンのカルボキシ基を構造修飾することにより、経口吸収性が改善されたプロドラッグである。
5 生体内での加水分解反応によって、セフジトレン、酢酸及びピバル酸(2,2-dimethylpropanoic acid)を生じる。
102回薬剤師国家試験 問210 解答解説
下記のリンク先を参照
102回問210の解答解説
102回薬剤師国家試験 問211 解答解説
◆ 1について
1 × ペネム骨格を有している。
→ 〇 セフェム骨格を有している。
β−ラクタム系抗生物質の基本骨格については下記のリンク先を参照
β−ラクタム系抗生物質の基本骨格
セフジトレンピボキシルはセフェム骨格を有する。
◆ 2,3について
2 × β-ラクタム環のカルボニル基の炭素の求電子性は、一般的な鎖状アミドのカルボニル基の炭素に比べて低くなっている。
→ 〇 β-ラクタム環のカルボニル基の炭素の求電子性は、一般的な鎖状アミドのカルボニル基の炭素に比べて高くなっている。
3 〇 細菌中のペプチドグリカン合成酵素との間で、β-ラクタム環の開環を伴って共有結合を形成することにより、細胞壁の生合成を阻害する。
β-ラクタム系抗生物質の作用は下記のリンク先を参照
β-ラクタム系抗生物質の作用機序
◆ 4について
4 〇 セフジトレンのカルボキシ基を構造修飾することにより、経口吸収性が改善されたプロドラッグである。
セフジトレンピボキシル(メイアクトMS)は、セフジトレンのカルボキシ基をピボキシルエステルとすることで、脂溶性が高まり、消化管からの吸収性が改善されている。
吸収後、消化管壁の細胞のエステラーゼによりエステル結合が加水分解されて、活性本体のセフジトレンを生成するプロドラッグである。
◆ 5について
5 × 生体内での加水分解反応によって、セフジトレン、酢酸及びピバル酸(2,2-dimethylpropanoic acid)を生じる。
エステル加水分解の位置と生成物の炭素数からして、酢酸は生成しないと推測できる。
セフジトレンピボキシル(メイアクトMS)は、生体内でエステラーゼによりエステル結合が加水分解される(下の図の赤点線の位置で)。
その後の代謝反応を経て、活性体のセフジトレンが生成する他、ピボキシル基の部分からはホルムアルデヒドとピバル酸(2,2-dimethylpropanoic acid)を生じることになる。
ピバル酸はカルニチン抱合を受けて尿中排泄されるが、低カルニチン血症から低血糖の副作用を起こすことがある。
詳細は下記のリンク先を参照
ピボキシル基の代謝と低カルニチン血症に伴う低血糖
体内で生成するホルムアルデヒドは発疹や消化管障害等の副作用を起こすことが示唆されている。ホルムアルデヒドは二酸化炭素として呼気中に排泄される。
★他サイトさんの解説へのリンク
102回問210,211(e-RECさん)