108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

108回薬剤師国家試験 問214?215
84歳男性。妻との二人暮らし。軽度のアルツハイマー型認知症と診断され、ドネペジル塩酸塩による治療を開始した。

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

問214(物理・化学・生物)
処方された医薬品と、その標的タンパク質に相互作用する内因性物質の正しい組合せはどれか。1つ選びなさい。

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

 

問215(実務)
妻から「薬は夫が自分で管理しているが、飲んだはずの薬を再度飲んだり服薬を忘れる日があるようだ。」、「服薬後の食欲低下と腹痛、下痢がある。」と薬局に相談があった。また、認知症治療を続け、夫が薬を正しく使用しているか確認できるようにしたいとの要望があった。
患者の状態等や妻の要望を考慮して、かかりつけ医に提案する、ドネペジル塩酸塩錠から変更する薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。

 

1 ドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠
2 ドネペジル塩酸塩経口ゼリー
3 ガランタミン錠
4 リバスチグミンテープ
5 メマンチン塩酸塩錠

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108回薬剤師国家試験 問214 解答解説

 

正解は5(Cとa)である。

 

処方されたドネペジル塩酸塩錠(アリセプト)は、アセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害する薬である。
アセチルコリンエステラーゼは、アセチルコリンのエステルを加水分解し、コリンと酢酸にする酵素である。

 

ドネペジルの構造はCであり、アセチルコリンの構造はaである。

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

可逆的アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の共通構造として、
アセチルコリンに類似して、
3級アミンまたは4級アンモニウムカチオンを有し、
そこから3〜5原子隔ててカルボニル基を有することが挙げられる。
以下に、例として、ドネペジル,ジスチグミン臭化物,アンベノニウム臭化物の構造を示す。

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

なお、ガランタミンは可逆的アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるが、
以下に示す通り、3級アミンはあるが、カルボニルはない。

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

 

以下、他の選択肢について

 

◆ Aについて

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

選択肢Aは、第1世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬のジフェンヒドラミンである。
そして、cがヒスタミンの構造である。

 

第1世代ヒスタミン受容体拮抗薬に多く見られる構造として、
以下に示す通り、
2つの芳香環が1つの原子を介してつながった構造と、
3級アミンを合わせもつことが挙げられる。

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

 

◆ Bについて

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

選択肢Bは、選択的アドレナリンβ1受容体拮抗薬のビソプロロールである。
そして、bがアドレナリンの構造である。

 

アドレナリン受容体を標的とする薬物は、カテコールアミンに類似した構造を有する。
アドレナリン受容体アゴニスト(刺激薬)は、ベンゼン環にヒドロキシ基を持つ。
このヒドロキシ基がアドレナリン受容体と水素結合を形成することで、アドレナリン受容体が活性型に構造変化する。

 

一方、アドレナリン受容体アンタゴニスト(拮抗薬)は、
ベンゼン環にヒドロキシ基を持たないので、アゴニスト作用を示さない。
また、アドレナリンβ受容体アンタゴニスト(βブロッカー)は、
ベンゼン環の側鎖がエーテル結合でつながれている。

 

108回薬剤師国家試験問214,215 ドネペジルの構造とその標的タンパク質に相互作用する内因性物質

 

 

108回薬剤師国家試験 問215 解答解説

 

ドネペジル塩酸塩錠(アリセプト錠)から変更する薬剤として最も適切なのは、
4のリバスチグミンテープ(イクセロンパッチ)である。

 

本患者は軽度のアルツハイマー型認知症と診断されている。
そして、「飲んだはずの薬を再度飲んだり服薬を忘れる日がある」ということ、
「夫が薬を正しく使用しているか確認できるようにしたい」ということを聞き取っている。
以上のことから、1日1回1枚の貼付で良いリバスチグミンテープが良いと考えられる。

 

リバスチグミンテープ(イクセロンパッチ)は、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症に適応があり、
1日1回1枚の貼付で良いので、服薬忘れや重複投与を防ぎやすくなるし、目視で適正使用を確認できるようになる。

 

以下、他の選択肢について

 

5のメマンチン塩酸塩錠(メマリー錠)の適応は、中等度及び高度のアルツハイマー型認知症であり、
軽度のアルツハイマー型認知症の適応はない。また、用法は1日1回の内服であり、ドネペジル塩酸塩錠と服薬方法が同じなので、服薬アドヒアランスの改善は期待できない。

 

1のドネペジル塩酸塩口腔内崩壊錠と2のドネペジル塩酸塩経口ゼリーは、
ドネペジル塩酸塩の内服薬であるが、
服薬後の食欲低下と腹痛、下痢の症状は、ドネペジル塩酸塩の内服の副作用の可能性があるため、代替薬として適切ではない。
また、これらの薬剤の用法は、1日1回の内服であり、ドネペジル塩酸塩錠と服薬方法が同じなので、服薬アドヒアランスの改善は期待できない。

 

3のガランタミン錠(レミニール錠)の用法は、1日2回の内服であるので、服薬アドヒアランスを悪化させてしまう恐れがある。

 

 

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108回問214,215(e-RECさん)

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