オルメサルタンとメトホルミン 高温多湿で変色 105回薬剤師国家試験問210
105回薬剤師国家試験 問210
73歳男性。高血圧と糖尿病のため以下の薬剤が処方されていた。
(処方)
メトホルミン塩酸塩錠250mg 1回1錠( 1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 30日分
オルメサルタンメドキソミル錠20mg 1回1錠( 1日1錠)
シタグリプチンリン酸塩水和物錠50mg 1回1錠( 1日1錠)
ピオグリダゾン塩酸塩錠30mg 1回1錠( 1日1錠)
1日1回 朝食後 30日分
薬剤師が患者宅を訪問した際、この患者に末梢神経障害などがみられ、薬剤をPTP シートから取り出すことに不自由していた。そのため、薬剤師は、一包化することを医師に提案することにした。患者が服用しているオルメサルタンメドキソミル錠の添付文書を確認したところ、下記のような記載があった。
【取扱い上の注意】
本剤をメトホルミン塩酸塩製剤と一包化し高温多湿条件下にて保存した場合、メトホルミン塩酸塩製剤が変色することがあるので、一包化は避けること。
105回薬剤師国家試験 問210
オルメサルタンメドキソミル錠に含まれる有効成分Tはプロドラッグであり、生体内において図に示すような活性体UとVを生じる。一方、高温多湿条件下でもTの加水分解反応によってVが生成し、これとメトホルミンとの反応によって変色が起こるものと推定されている。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 TはUの疎水性を高めることにより、経口吸収性を改善したプロドラッグである。
2 Uのテトラゾリル基はヒドロキシ基の生物学的等価体である。
3 Tの炭酸エステル部位の酸化反応により、VとCO2 を生じる。
4 メトホルミンは高い求電子性をもつ。
5 メトホルミンとVとの反応は縮合反応である。
問211
この処方を調剤する場合に、薬剤師の対応として適切でないのはどれか。1つ選びなさい。なお、それぞれのケースにおいて患者の了承はあるものとする。
1 オルメサルタンメドキソミル錠とそれ以外の薬剤を別々に分包する。
2 医薬品インタビューフォームなどを参考にし、変色が起きないと考えられる日数で分割調剤する。
3 乾燥剤を入れた缶に保存するなど、変色が進まない保管方法を患者に指導する。
4 メトホルミン塩酸塩錠を他のビグアナイド系薬剤に変更可能か医師と協議する。
5 オルメサルタンメドキソミル錠を他の降圧剤に変更可能か医師と協議する。
105回薬剤師国家試験 問210 解答解説
◆ 1について
1 〇 TはUの疎水性を高めることにより、経口吸収性を改善したプロドラッグである。
T(オルメサルタンメドキソミル)は、U(オルメサルタン)のカルボキシ基をメドキソミルでエステル化することにより、疎水性を高め、経口吸収性を改善している。オルメサルタンメドキソミルはプロドラッグであり、経口投与後、主に小腸上皮においてエステラーゼにより加水分解を受け、活性代謝物であるオルメサルタンに変換され、アンジオテンシンU(AU)タイプ1(AT1)受容体に選択的に作用してアンジオテンシンUの結合を競合的に阻害し、昇圧系であるアンジオテンシンUの薬理作用を抑制する。
◆ 2について
2 × Uのテトラゾリル基はヒドロキシ基の生物学的等価体である。
→ 〇 Uのテトラゾリル基はカルボキシ基の生物学的等価体である。
テトラゾリル基の水素はカルボキシ基と同程度の酸性を示すため、
テトラゾリル基はカルボキシ基の生物学的等価体(バイオアイソスター)である。
◆ 3について
3 × Tの炭酸エステル部位の酸化反応により、VとCO2 を生じる。
→ 〇 Tの炭酸エステル部位の加水分解により、VとCO2 を生じる。
◆ 4,5について
4 × メトホルミンは高い求電子性をもつ。
→ 〇 メトホルミンは高い求核性をもつ。
メトホルミンの構造中のグアニジノ基の窒素が高い求核性を示す。
5 〇 メトホルミンとVとの反応は縮合反応である。
メトホルミンとVとの反応は、アルデヒド・ケトンと1級アミンが脱水縮合してイミンを生成する反応に似ている。
アルデヒド,ケトンとアンモニア・1級アミンの反応機構は下記のリンク先を参照
92回問9d
メトホルミンのグアニジノ基の窒素がVのカルボニル炭素に対して求核付加した後、脱水が起こり、イミンを形成している。
105回薬剤師国家試験 問211の解答解説は下記のリンク先を参照
105回問211
★他サイトさんの解説へのリンク
第105回問210,211(e-RECさん)