オピオイド鎮痛薬の受容体との相互作用及びファーマコフォア 106回薬剤師国家試験問213改題
106回薬剤師国家試験 問213改題
78歳男性。肺がん末期のため、在宅で緩和ケアを受けている。痛みに対して以下の薬剤が処方されていた。本日、薬剤師が患者宅を訪問したところ、痛みの評価は、NRS(数値スケール)で6となり、痛みが増強してきた。そこで、薬剤師が医師に痛みの三段階除痛ラダーに基づき、オピオイド鎮痛薬の追加を提案することにした。
(処方)
アセトアミノフェン錠500mg 1回2錠(1日8錠)
1日4回 朝昼夕食後・就寝前 14日分
追加のオピオイド鎮痛薬の候補は下記の通り。
追加される鎮痛薬はオピオイド受容体に作用する。オピオイド受容体には、内因性リガンドとして、以下に示したメチオニンエンケファリンなどのペプチドが知られている。内因性リガンドと受容体との相互作用を考えたとき、追加される鎮痛薬の受容体との相互作用及びファーマコフォアに関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選びなさい。
1 塩基性窒素をもち、生体内でプロトン化されて受容体のカルボキシラートイオンとイオン結合する。
2 塩基性窒素原子と炭素数2あるいは3個の炭素鎖で結合した芳香環をもつ。
3 カルボキシ基をもち、受容体のグアニジノ基とイオン結合する。
4 代謝されてフェノール性ヒドロキシ基を生じ、受容体と水素結合する。
5 芳香環をもち、受容体のベンゼン環とπ−π相互作用する。
106回薬剤師国家試験 問213改題
ファーマコフォアについては下記のリンク先を参照
ファーマコフォア(日本薬学会さん)
メチオニンエンケファリンの構造とオピオイド鎮痛薬の構造の共通点を探せば正解を導き出せる。
メチオニンエンケファリンのN末端のチロシンは下記の構造的特徴を有する。
追加されるオピオイド鎮痛薬も同様の構造を有する。
よって、オピオイド受容体を標的とする薬物のファーマコフォアは、
@ 塩基性窒素
A 塩基性窒素から炭素数2,3個離れたベンゼン環
B フェノール性ヒドロキシ基(または代謝されてフェノール性ヒドロキシ基を生じる構造)
が存在し、内因性オピオイドペプチドのN末端のチロシンと同様の空間配置を取れることである。ただし、オピオイドにはフェノール性ヒドロキシ基が無いものもある。
以上より、
設問の記述の正誤を判定すると、選択肢3が誤りだとわかる。
”3 × カルボキシ基をもち、受容体のグアニジノ基とイオン結合する。”
カルボキシ基はオピオイドのファーマコフォアではない。
その他の選択肢の記述は正しい。
1 〇 塩基性窒素をもち、生体内でプロトン化されて受容体のカルボキシラートイオンとイオン結合する。
2 〇 塩基性窒素原子と炭素数2あるいは3個の炭素鎖で結合した芳香環をもつ。
4 〇 代謝されてフェノール性ヒドロキシ基を生じ、受容体と水素結合する。
5 〇 芳香環をもち、受容体のベンゼン環とπ−π相互作用する。
また、オピオイドの芳香環は、オピオイド受容体のバリン、イソロイシン、メチオニンなどとも相互作用している可能性が指摘されている。
★他サイトさんの解説へのリンク
第106回問212,213(e-RECさん)