DNAの塩基部分をアルキル化するのはどれか 107回薬剤師国家試験問107
107回薬剤師国家試験 問107
次の抗悪性腫瘍薬のうち、DNAの塩基部分をアルキル化するのはどれか。1つ選びなさい。
107回薬剤師国家試験 問107 解答解説
DNAの塩基部分をアルキル化するのは
2のマイトマイシンCである。
マイトマイシンCは抗腫瘍性抗生物質であり、
生体内で還元されることで活性体となるプロドラッグである。
マイトマイシンCの構造的特徴として、
インドールキノンとアジリジンを含むことが挙げられる。
マイトマイシンCはインドールキノンが還元されてヒドロキノン、または、セミキノンとなり、
その後、親薬物のマイトセンとなり、DNAのグアニン2位に置換するアミノ基をアルキル化して、
2本のDNA鎖間に架橋を形成する。
詳細は下記のリンク先を参照
マイトマイシンCの構造と作用機序
他の選択肢について
◆ 1について
1はイマチニブ(グリベック)である。
イマチニブ(グリベック)はチロシンキナーゼ活性阻害剤であり、
Bcr-Abl、v-Abl、c-Ablチロシンキナーゼ活性を阻害する。
さらに、血小板由来成長因子(PDGF)受容体及び幹細胞因子(SCF)受容体であるKITのチロシンキナーゼ活性を阻害し、
PDGFやSCFが介する細胞内シグナル伝達を阻害する。
イマチニブの適応例は下記の通り。
・慢性骨髄性白血病
・KIT(CD117)陽性消化管間質腫瘍
・フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病
・FIP1L1-PDGFRα陽性の下記疾患
好酸球増多症候群、慢性好酸球性白血病
◆ 3について
3はエストロゲン受容体競合的阻害剤のタモキシフェン(ノルバデックス)である。
タモキシフェン(ノルバデックス)は乳癌組織等のエストロゲンレセプターに対しエストロゲンと競合的に結合し、抗エストロゲン作用を示すことによって乳がん細胞の増殖を抑制し、抗乳癌作用を発揮するものと考えられる。
エストロゲン受容体競合阻害剤の乳がん治療薬である
タモキシフェン(ノルバデックス),トレミフェン(フェアストン)は、
共にその構造的特徴として、
下記の赤枠で示す通りアルケンのC=Cに3つのベンゼン環が置換する構造を有することが挙げられる。
また、青枠で示す通り3級アミン部分周辺の構造も共通している。
◆ 4について
4はテガフールであり、
生体内で肝臓のCYP2A6などで代謝され5-フルオロウラシル(5-FU)に変換されるプロドラッグである。
5-FUは細胞内で5-フルオロデオキシウリジン-5´-一リン酸(FdUMP)に代謝され、チミジル酸シンターゼ(チミジル酸合成酵素)と共有結合を形成し、
これを不可逆的に阻害する。
DNAをアルキル化するものではない。
5-FUの作用の詳細は下記のリンク先を参照
フルオロウラシル(5-FU)の薬理 作用機序
テガフールは単剤(フトラフール)の他、
テガフール,ギメラシル,オテラシルカリウムの3剤の配合剤(ティーエスワン配合剤)として用いられる。
下記のリンク先を参照
ティーエスワンの作用機序
◆ 5について
5はリュープロレリンである。
リュープロレリンの構造的特徴として、
N末端に5-オキソ-L-プロリン、
C末端にカルボキシ基がN -エチル化されたL-プロリンを有することが挙げられる。
リュープロレリンは黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)誘導体であり、
下垂体に作用するものである。
詳細は下記のリンク先を参照
リュープロレリン酢酸塩の構造的特徴 102回問106
★他サイトさんの解説へのリンク
107回問107(e-RECさん)