108回薬剤師国家試験問211 SGLT2阻害薬のダパグリフロジンとフロリジンの化学
108回薬剤師国家試験 問210?211
60歳女性。5年前より糖尿病治療のためクリニックを受診している。今回体重増加と血糖コントロール不良により、現在服用中の薬剤(処方1)にダパグリフロジンプロピレングリコール水和物錠(処方2)が追加された。
問210(実務)
薬剤師による処方2の説明として、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 尿量を減らす働きがあります。
2 尿中の糖を減らす働きがあります。
3 排尿時の違和感があるときは申し出てください。
4 喉の渇きを感じることがあります。
5 腹部膨満感を起こしやすいです。
問211(物理・化学・生物)
処方2ダパグリフロジン(A)は、リンゴの樹皮に含まれるフロリジン(B)をリード化合物として開発された。これらの化合物に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 いずれもガラクトピラノシド構造を含む。
2 化合物Bは、化合物Aよりグリコシダーゼに対して安定である。
3 化合物Bは、α−グリコシド結合をもつ。
4 化合物Aは、プロドラッグである。
5 化合物Bは、アセタール結合をもつ。
108回薬剤師国家試験 問210 解答解説
下記のリンク先を参照
ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物の服薬指導 108回問210
108回薬剤師国家試験 問211 解答解説
◆ 1について
1 × いずれもガラクトピラノシド構造を含む。
→ 〇 いずれもグルコピラノシド構造を含む。
AとBは、いずれもグルコピラノース(グルコースの6員環構造)が他の化合物と結合した構造を含む。
これをグルコピラノシド構造という。
◆ 3について
3 × 化合物Bは、α−グリコシド結合をもつ。
→ 〇 化合物Bは、β−グリコシド結合をもつ。
糖のアノマー性ヒドロキシ基と他の化合物とが脱水縮合して形成される共有結合をグリコシド結合と呼ぶ。
アノマー異性体のうち、1位のヒドロキシ基の結合の向きと5位のCH2OHの結合の向きが異なるものをα−アノマーと呼び、1位のヒドロキシ基の結合の向きと5位のCH2OHの結合の向きが同じものをβ−アノマーと呼ぶ。
以下に、例として、
α−アノマーのα−D−グルコピラノースとβ−アノマーのβ−D−グルコピラノースの構造を示す。
α−アノマーが形成するグリコシド結合をα−グリコシド結合と呼び、
β−アノマーが形成するグリコシド結合をβ−グリコシド結合と呼ぶ。
化合物Bは、β−D−グルコピラノースのアノマー性ヒドロキシ基において、脱水縮合により他の化合物と結合した構造を持つので、β−グリコシド結合をもつといえる。
◆ 2について
2 × 化合物Bは、化合物Aよりグリコシダーゼに対して安定である。
→ 〇 化合物Bは、化合物Aよりグリコシダーゼに対して不安定である。
グリコシダーゼとは、グリコシド結合を加水分解する酵素である。
化合物Bに見られるエーテルのグリコシド結合をO−グリコシド結合と呼ぶ。
化合物Aに見られる炭素−炭素のグリコシド結合をC−グリコシド結合と呼ぶ。
グリコシダーゼはO−グリコシド結合を加水分解する酵素なので、
化合物Bは化合物Aよりもグリコシダーゼによる加水分解を受けやすい。
◆ 4について
4 × 化合物Aは、プロドラッグである。
プロドラッグとは、投与され、代謝された後にはじめて活性体となる薬物のことである。
化合物Aのダパグリフロジンは、このままの形で活性体であるので、プロドラッグではない。
◆ 5について
5 〇 化合物Bは、アセタール結合をもつ。
アセタールとは、以下に示す通り、
1つの炭素が2つのエーテル結合を形成している構造を指す。
なお、アセタールは、アルデヒド・ケトンに対して、
2分子のアルコールが求核付加することで生成する。
アセタールについては下記のリンク先を参照
アルデヒド・ケトンとアルコールからアセタール化の反応機構 91回問9c
★他サイトさんの解説へのリンク
108回問210,211(e-RECさん)