アルツハイマー型認知症治療薬の作用する酵素,受容体の基質,リガンドの構造 100回薬剤師国家試験問213
100回薬剤師国家試験 問212-213
80歳女性。2年前に軽度アルツハイマー型認知症と診断され、現在ドネペジル塩酸塩錠5mgを服用している。改訂長谷川式簡易知能評価スケールを用いて評価した結果、ここ1年で軽度から中等度に悪化した。そこで、カンファレンスで治療方針について話し合うことになった。
問212
薬剤師からの提案事項として適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 ガランタミン臭化水素酸塩錠を併用する。
2 ビペリデン塩酸塩錠を併用する。
3 ガランタミン臭化水素酸塩錠に変更する。
4 メマンチン塩酸塩錠に変更する。
問213
以下の各医薬品と、それらが作用する酵素あるいは受容体に対する内在性の基質あるいはリガンドの組合せとして正しいのはどれか。2つ選びなさい。
100回薬剤師国家試験問212の解説は下記のリンク先を参照
100回問212の解説
100回問213 解答解説
◆ 1について
上記の組み合わせは誤りである。
ドネペジル塩酸塩(アリセプト)は、アセチルコリン(ACh)を分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を可逆的に阻害することにより脳内ACh量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活する。
ドネペジル塩酸塩(アリセプト)は、アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制の適応がある。
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は、アセチルコリンを加水分解してコリンと酢酸を生成する酵素である。
◆ 2について
上記の組み合わせは誤りである。
ビペリデン塩酸塩(アキネトン)は、ムスカリン性アセチルコリン受容体を遮断することで、線条体におけるアセチルコリン神経系とドパミン神経系のアンバランスを改善する。
ビペリデン塩酸塩(アキネトン)は、パーキソニズム,ジスキネジア(遅発性を除く),アカシジアの適応がある。
◆ 3について
上記の組み合わせは正しい。
メマンチン塩酸塩(メマリー)は、グルタミン酸NMDA受容体非競合性電位依存性拮抗薬である。
アルツハイマー型認知症ではグルタミン酸神経系の機能異常が関与しており、グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体チャネルの過剰な活性化が原因の一つと考えられている。メマンチンはNMDA受容体チャネル阻害作用により、その機能異常を抑制する。
選択的にNMDA受容体のPCP結合部位に作用しMg2+と置換してチャネル機能を阻害することが、神経細胞傷害の進行抑制の作用機序とされている。
メマンチン塩酸塩(メマリー)の添付文書上の適応は、中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制である。
◆ 4について
上記の組み合わせは正しい。
ガランタミン(レミニール)は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を競合的に阻害することで脳内ACh濃度を上昇させる。それに加え、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)のアロステリック活性化リガンド(allosteric potentiating ligand、APL)として、ACh結合部とは異なる部位(アロステリック部位)に結合し、AChによるニコチン性アセチルコリン受容体の活性化を増強する作用も有する。以上の機序で脳内コリン機能を増強させる。更に、神経細胞保護作用により神経細胞の機能低下を抑制する。
ガランタミン臭化水素酸塩(レミニール)の添付文書上の適応は、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制である。
◆ リバスチグミン
他、アルツハイマー型認知症の中核症状の治療薬として、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬のリバスチグミンがある。
リバスチグミンは、脳内において神経のアセチルコリンエステラーゼ及びグリア細胞のブチリルコリンエステラーゼの活性を阻害し、シナプス間隙のアセチルコリンの分解を抑制し、脳内アセチルコリン量を増加させ、脳内コリン作動性神経を賦活する。
リバスチグミンは貼付剤で投与される(先発:イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ)。
リバスチグミンの添付文書上の適応は、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制である。
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第100回問212,213(e-RECさん)