PGI2,イロプロスト,ベラプロストNaの化学 105回薬剤師国家試験問213
105回薬剤師国家試験 問213
イロプロストやベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2の構造をもとに開発された薬物である。
これらに関する記述のうち、最も適切なのはどれか。2つ選びなさい。
1 イロプロストはプロスタグランジンI2の部分構造aの酸素原子を炭素原子に置換することにより、シトクロムP450による代謝を受けやすくしている。
2 ベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2のプロドラッグである。
3 ベラプロストナトリウムはカルボン酸部位を塩とすることにより、水溶性を向上させている。
4 プロスタグランジンI2の部分構造aの二重結合の立体化学はE配置である。
5 ベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2の部分構造aに芳香環を導入することにより、酸性条件下での安定性を向上させている。
105回薬剤師国家試験 問213 解答解説
◆ 1について
1 × イロプロストはプロスタグランジンI2の部分構造aの酸素原子を炭素原子に置換することにより、シトクロムP450による代謝を受けやすくしている。
→ 〇 イロプロストはプロスタグランジンI2の部分構造aの酸素原子を炭素原子に置換することにより、シトクロムP450による代謝を受けにくくしており、PGI2に比べて安定性が高く、半減期は長くなっている。
◆ 2,3,5について
2 × ベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2のプロドラッグである。
ベラプロストNaは生体内でPGI2に代謝されるわけではない。よって、ベラプロストNaはPGI2のプロドラッグではない。
3 〇 ベラプロストナトリウムはカルボン酸部位を塩とすることにより、水溶性を向上させている。
5 〇 ベラプロストナトリウムはプロスタグランジンI2の部分構造aに芳香環を導入することにより、酸性条件下での安定性を向上させている。
PGI2の部分構造a(エノールエーテル)は、酸性条件下で加水分解を受けやすく不安定であるため、経口投与は困難であった。
ベラプロストNaではPGI2の部分構造aに芳香環を導入することにより、酸性条件下での安定性が向上しているため、経口投与が可能となっている。
◆ 4について
4 × プロスタグランジンI2の部分構造aの二重結合の立体化学はE配置である。
→ 〇 プロスタグランジンI2の部分構造aの二重結合の立体化学はZ配置である。
詳細は下記のリンク先を参照
105回問213の4
★他サイトさんの解説へのリンク
第105回問212,213(e-RECさん)
各医薬品の添付文書上の作用機序と適応は以下の通り。
◆ イロプロスト(ベンテイビス)
イロプロスト(ベンテイビス)は、ネブライザーを用いた吸入で肺動脈性肺高血圧症に適応される。
プロスタグランジンI2と同様に、イロプロストは血管平滑筋及び血小板のプロスタグランジンI2受容体を介して、アデニレートシクラーゼを活性化し、細胞内cAMP産生を促進させることにより、血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を示す。
◆ ベラプロストナトリウム(ドルナー、プロサイリン)
ベラプロストナトリウム(ドルナー、プロサイリン)は経口投与で次の疾患に適応される。
・原発性肺高血圧症
・慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善
プロスタサイクリン(PGI2)と同様に、ベラプロストナトリウムは血小板及び血管平滑筋のプロスタサイクリン受容体を介して、アデニレートシクラーゼを活性化し、細胞内cAMP濃度上昇、Ca2+流入抑制及びトロンボキサンA2生成抑制等により抗血小板作用、血管拡張作用等を示す。