薬物の物性に関する記述 98回薬剤師国家試験問175
98回薬剤師国家試験 問175
薬物の物性に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 非晶質は、熱力学的に平衡状態にある。
2 共融混合物では、異なる成分どうしが結晶格子を形成している。
3 水和物結晶は、その無水物結晶よりも水に対する溶解度が高い。
4 固溶体中において、薬物は結晶状態で分散している。
5 結晶多形において、準安定形に比べて安定形の方が融点が高い。
98回薬剤師国家試験 問175 解答解説
◆ 1について
1 × 非晶質は、熱力学的に平衡状態にある。
→ 〇 非晶質は、熱力学的に非平衡状態にある。
非晶質(アモルファス)は、粒子を構成する分子や原子が不規則に配列したものであり、結晶に比べて高いエネルギー状態にあり、不安定である。
非晶質は熱力学的に平衡状態ではなく、温度変化や吸湿などで安定な結晶形に変化することがある。
なお、一般に、非晶質は結晶形に比べて溶解度が高い。
関連問題
・非晶質の医薬品を高湿度下に保存すると水分の収着により結晶化 103回問174の3
◆ 2について
2 × 共融混合物では、異なる成分どうしが結晶格子を形成している。
共融混合物では、異なる2つの成分がそれぞれ結晶格子を形成し、それらが不均一に存在している。
共融混合物は共晶と呼ばれることがあり、
共晶のうち、1つの成分が水の場合は氷晶と呼ばれる。
◆ 3について
3 × 水和物結晶は、その無水物結晶よりも水に対する溶解度が高い。
→ 〇 水和物結晶は、その無水物結晶よりも水に対する溶解度が低い。
ある成分が溶液から結晶化する際、溶媒分子を取り込んで安定な結晶を形成することがある。
この結晶を溶媒和物と呼び、溶媒分子が水分子の場合を水和物と呼ぶ。
一般に、無水物の結晶は水和物よりも水に対する溶解度が高い。
◆ 4について
4 × 固溶体中において、薬物は結晶状態で分散している。
固溶体とは2つの成分の固相が溶け合い均一になっているものであるが、
2つの成分で1つの結晶格子を形成している。
◆ 5について
5 〇 結晶多形において、準安定形に比べて安定形の方が融点が高い。
結晶多形において、
安定形とは化学ポテンシャルが最も小さい結晶であり、
安定形以外の結晶は準安定形とされる。
一般に、安定形は準安定形に比べて融点が高く、溶解度が低い。
言い換えると、準安定形は安定形に比べて融点が低く、溶解度が高い。
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