薬剤師国家試験問題集 溶液の性質

107回薬剤師国家試験　問94
生体膜の膜電位は、膜の両側におけるイオン濃度の不均衡によって生じる。そのイオン濃度の不均衡は、生体膜が水や小さいイオンは通すが、大きなイオンは通さない半透膜の性質をもつことで生じる。

 

 

図のように、半透膜の内相にタンパク質P⁵⁻（−5の電荷をもち5Na+が対イオンとなっている）の0.01mol/L 水溶液を置き、外相には濃度が0.1mol/L のNaCl水溶液を置いておく。平衡状態に達したとき、半透膜の外相と内相のNa+とCl−の濃度には次式が成立している。

 

［Na^＋］_外相・［Cl⁻］_外相 =［Na^＋］_内相・［Cl⁻］_内相

 

平衡に達したときの半透膜の内相と外相のNa+の濃度の差に最も近い値はどれか。1つ選びなさい。ただし、浸透圧差に基づく物質の移動は考慮しないものとする。

 

1　0.01 mol/L
2　0.03 mol/L
3　0.05 mol/L
4　0.07 mol/L
5　0.09 mol/L

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107回薬剤師国家試験　問94　解答解説

 

正解は2の0.03 mol/Lである。

 

 

◆　初期状態
・内相の濃度
タンパク質P⁵⁻の濃度が0.01mol/Lで、
P⁵⁻は5Na+が対イオンとなっているので、
Na+濃度は0.05mol/Lである。
Cl−濃度は0 mol/Lである。

 

・外相の濃度
外相は0.1mol/L のNaCl水溶液なので、
Na+濃度は0.1mol/L、Cl−濃度は0.1mol/Lである。

 

 

◆　平衡状態
イオン濃度の不均衡のためにNa+とCl−が外相から内相に移動するため、
平衡状態では、
外相のNa+とCl−の濃度は初期状態よりも低下し、
内相のNa+とCl−の濃度は初期状態よりも上昇する。
Na+とCl−は同じ量だけ移動するので、
平衡状態の外相と内相の濃度は下記のように表される。

 

・外相の濃度
Na+濃度：(0.1−X)mol/L
Cl−濃度：(0.1−X) mol/L

 

・内相の濃度
Na+濃度：(0.05+X)mol/L
Cl−濃度：X mol/L

 

 

平衡状態に達したとき、
外相と内相のNa+とCl−の濃度には次式が成立している。
［Na+］_外相・［Cl−］_外相 =［Na+］_内相・［Cl−］_内相　より、
(0.1−X)mol/L・(0.1−X)mol/L = (0.05+X)mol/L・X mol/L
X = 0.04

 

よって、
平衡に達したときの内相と外相のNa+の濃度は下記の通り。
内相のNa+濃度＝(0.05+X)mol/L= 0.09mol/L
外相のNa+濃度＝(0.1−X)mol/L= 0.06mol/L

 

したがって、
平衡に達したときの内相と外相のNa+の濃度の差は、
0.09mol/L−0.09mol/L = 0.03mol/L　である。

 

 

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