活量,平均活量係数,イオン強度に関する記述 95回薬剤師国家試験問21
95回薬剤師国家試験 問21
活量及びイオン強度に関する記述のうち、正しいものはどれか。
a 理想溶液では、活量係数は 1 である。
b Na+、Cl− の活量係数をそれぞれ γ+、γ− とすると、
NaClの平均活量係数γ± は、
c 1.0×10−6 mol/L CaCl2 水溶液のイオン強度は、1.0×10−6 mol/L である。
d 溶液中ではイオン間に相互作用が働くため、イオン強度が増大すると、平均活量係数は1 より大きくなる。
95回薬剤師国家試験 問21 解答解説
◆ aについて
a 〇 理想溶液では、活量係数は 1 である。
実在溶液の分析では、物質同士の相互作用を考慮に入れる必要があるため、
実効濃度(または実効モル分率)として活量aが定義される。
成分iの活量(ai)は、次式で表される。
ai = γ・Xi
γ:活量係数 X:成分iのモル分率またはモル濃度
活量係数γは理想溶液からのずれを表す係数である。
理想溶液では、活量係数γは1である。
◆ bについて
b 〇 Na+、Cl− の活量係数をそれぞれ γ+、γ− とすると、
NaClの平均活量係数γ± は、
電解質の活量については、陽イオンの活量(a+)と陰イオンの活量(a−)を個別に表すのではなく、
陽イオンの活量と陰イオン活量を幾何平均した平均活量(a±)で表す。
NaClのような1価−1価の電解質の平均活量は下記のように表される。
また、活量係数γも陽イオンと陰イオンの活量係数を幾何平均した平均活量係数(γ±)として表される。
1価−1価の電解質溶液の平均活量は下記のように表される。
◆ cについて
c × 1.0×10−6 mol/L CaCl2 水溶液のイオン強度は、1.0×10−6 mol/L である。
→ 〇 1.0×10−6 mol/L CaCl2 水溶液のイオン強度は、1.0×10−3 mol/L である。
イオン強度(I)は次式で表される。
CaCl2は水中で下記のように完全に電離すると考える。
CaCl2 → Ca2+ + 2Cl−
よって、
1.0×10−6 mol/LのCaCl2 水溶液のイオン強度は、下記のように計算される。
◆ dについて
d × 溶液中ではイオン間に相互作用が働くため、イオン強度が増大すると、平均活量係数は1 より大きくなる。
→ 〇 溶液中ではイオン間に相互作用が働くため、イオン強度が増大すると、平均活量係数は1 より小さくなる。ただし、高濃度の強電解質溶液におけるイオンの平均活量係数は、1より大きくなることがある。
溶液中の電解質の活量について、
平均活量係数(γ±)とイオン強度(I)の関係式として、
デバイ・ヒュッケルの極限則があり、
298Kで次式が成り立つ。
これによると、理論的に、
イオン強度が0の時に平均活量係数は1であり、
イオン強度が増大するにつれ平均活量係数は小さくなる。
これは、イオン強度が高いほど、イオン間の相互作用が多く働くためと考えられる。
ただ、物質の相互作用によっては、活量係数が1より大きくなることもある。
高濃度の強電解質溶液では、平均活量係数が1より大きくなる場合もあることが知られている。