イオン間反応の速度定数と溶媒の誘電率 87回薬剤師国家試験問166c
87回薬剤師国家試験 問166c
医薬品の安定性に関する記述の正誤を判定してみよう。
c 水溶液中において同符号のイオン間の反応では,溶媒の誘電率が増加すると分解速度定数は減少する。
87回薬剤師国家試験 問166c 解答解説
c × 水溶液中において同符号のイオン間の反応では,溶媒の誘電率が増加すると分解速度定数は減少する。
→ 〇 水溶液中において同符号のイオン間の反応では,溶媒の誘電率が増加すると分解速度定数は増加する。
(1)イオン−イオン間の反応と溶媒の誘電率の関係
イオンA−イオンB間の反応速度について、
反応速度定数(k)と反応物の電荷(Z)および溶媒の誘電率(ε:イプシロン)の関係式として次式が成り立つ。
logk = logk∞ − K・ZA・ZB・(1/ε)
ZA:イオンAの電荷 ZB:イオンBの電荷
ε:溶媒の誘電率 k∞:ε→∞の時の反応速度定数
K:比例定数
上式より、次のことがいえる。
・イオンAとイオンBが同符号の場合、ZA・ZB>0 なので、
溶媒の誘電率εが増加すると、反応速度定数kは大きくなる。
よって、同符号のイオン間の反応で分解する医薬品は、
溶媒の誘電率εが増加すると、反応速度定数kが大きくなるので、安定性は低くなる。
・イオンAとイオンBが異符号の場合、ZA・ZB<0 なので、
溶媒の誘電率εが増加すると、反応速度定数kは小さくなる。
よって、異符号のイオン間の反応で分解する医薬品は、
溶媒の誘電率εが増加すると、反応速度定数kが小さくなるので、安定性は高くなる。
(2)イオン−双極子間の反応と溶媒の誘電率の関係
イオン−双極子間の反応速度について、
反応速度定数(k)と反応物の電荷(Z)および溶媒の誘電率(ε:イプシロン)の関係式として次式が成り立つ。
logk = logk∞ + K・Z2・(1/ε)
Z:イオンの電荷 ε:溶媒の誘電率
k∞:ε→∞の時の反応速度定数 K:比例定数
上式より、次のことがいえる。
・イオンと双極子の反応の速度について、溶媒の誘電率εが増加すると、反応速度定数kは大きくなる。
よって、イオンと双極子の反応で分解する医薬品は、
溶媒の誘電率εが増加すると、分解反応速度定数kが大きくなるので、安定性は低くなる。
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