イオン間の反応で分解する医薬品の安定性とイオン強度の関係 94回薬剤師国家試験問167d
94回薬剤師国家試験 問167d
医薬品の安定性に関する記述の正誤を判定してみよう。
d 異符号のイオン間の反応で分解する医薬品は、溶液のイオン強度が増大すると不安定になる。
94回薬剤師国家試験 問167d 解答解説
d × 異符号のイオン間の反応で分解する医薬品は、溶液のイオン強度が増大すると不安定になる。
→ 〇 異符号のイオン間の反応で分解する医薬品は、溶液のイオン強度が増大すると安定になる。
イオンAとイオンBの反応速度について、
反応速度定数kと反応物の電荷および溶液のイオン強度の関係式として次式が成り立つ。
logk = logk0 + 1.02 ZA・ZB・√I
ZA:イオンAの電荷 ZB:イオンBの電荷
I:溶液のイオン強度 k0:I=0の時の反応速度定数
上式より、イオン間の反応について次のことがいえる。
・イオンAとイオンBが同符号の場合、ZA・ZB>0 なので、
イオン強度Iが増大すると、反応速度定数kは大きくなる。
よって、同符号のイオン間の反応で分解する医薬品は、
塩の添加などで溶液のイオン強度が増大すると、
分解反応速度定数kが高くなるので、安定性は低くなる。
・イオンAとイオンBが異符号の場合、ZA・ZB<0 なので、
イオン強度Iが増大すると、反応速度定数kは小さくなる。
よって、異符号のイオン間の反応で分解する医薬品は、
溶液のイオン強度が増大すると、
分解反応速度定数kが低くなるので、安定性は高くなる。
なお、中性の医薬品は電荷Zが0であるため、その安定性はイオン強度の影響を受けない。