薬物の消化管吸収に関する記述 98回薬剤師国家試験問166

98回薬剤師国家試験 問166
薬物の消化管吸収に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 弱酸性薬物を経口投与した場合、胃で溶解した後、小腸で析出し、吸収が不良となることがある。
2 弱塩基性薬物の単純拡散による吸収は、一般に、溶液のpHが低い方が良好である。
3 多くの薬物は、胃で良好に吸収されるため、胃内容排出速度の変化により吸収が影響を受けることはない。
4 リボフラビンは脂溶性が高く、小腸全体から良好に吸収される。
5 アンピシリンは、親水性が高く膜透過性が低いため、吸収改善のための脂溶性プロドラッグが開発されている。

トップページへ

 

薬剤師国家試験過去問題 科目別まとめ一覧 へ

 

薬剤師国家試験過去問題 吸収 一覧へ

 

 

98回薬剤師国家試験 問166 解答解説

 

◆ 1について
1 × 弱酸性薬物を経口投与した場合、胃で溶解した後、小腸で析出し、吸収が不良となることがある。

 

弱酸性薬物は溶液のpHが高いほど溶解度が高くなる。
よって、pH1〜3の胃内で溶解した弱酸性薬物が、pH5〜8の小腸内で析出することは起こりにくい。

 

一方、弱塩基性薬物は溶液のpHが高いほど溶解度が低くなる。
よって、pH1〜3の胃内で溶解した弱塩基性薬物が、pH5〜8の小腸内で析出することは起こり得る。

 

 

◆ 2について
2 × 弱塩基性薬物の単純拡散による吸収は、一般に、溶液のpHが低い方が良好である。
→ 〇 弱塩基性薬物の単純拡散による吸収は、一般に、溶液のpHが高い方が良好である。

 

詳細は下記のリンク先を参照
弱塩基性薬物の単純拡散による吸収とpH 98回問166の2

 

 

◆ 3について
3 × 多くの薬物は、胃で良好に吸収されるため、胃内容排出速度の変化により吸収が影響を受けることはない。

 

多くの薬物は主に小腸で吸収されるため、胃内容排出速度の変化により吸収が影響を受ける。

 

 

◆ 4について
4 × リボフラビンは脂溶性が高く、小腸全体から良好に吸収される。

 

リボフラビン(ビタミンB2)は水溶性ビタミンであり、
小腸の十二指腸部でトランスポーターを介して吸収される。

 

 

◆ 5について
5 〇 アンピシリンは、親水性が高く膜透過性が低いため、吸収改善のための脂溶性プロドラッグが開発されている。

 

アンピシリンは酸に不安定であり、かつ、アミノ基とカルボキシ基がイオン化するので、消化管からの吸収が悪い。
バカンピシリン(ペングッド)は、アンピシリンをエステル化合物としたプロドラッグであり、消化管内のpHでの安定性向上、かつ、脂溶性を高め、生体膜透過性を高めることで、受動拡散による消化管吸収の増大が図られている。
バカンピシリンは、消化管から吸収された後、エステル結合が加水分解され、アンピシリンとなる。

 

関連問題
バカンピシリン プロドラッグの目的 96回問178の1

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
98回問166(e-RECさん)

トップへ戻る