フェノール類の性質 薬学化学 90回薬剤師国家試験問8

第90回薬剤師国家試験 問8改題
フェノール類に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

a phenolは酸性物質であり、炭酸水素ナトリウムと容易に塩を形成する。

 

d phenolの沸点がtolueneよりも高いのは分子間水素結合を形成しているか らである。

 

e 2,4,6-trinitrophenolはピクリン酸とよばれる酸性物質であり、炭酸水素ナトリウムと容易に塩を形成する。

 

f sodium phenoxideは、十分量の炭酸と反応させるとphenolを遊離する。

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第90回薬剤師国家試験 問8改題 解答解説

 

◆ aについて
a × phenolは酸性物質であり、炭酸水素ナトリウムと容易に塩を形成する。

 

酸塩基反応は、より弱い酸またはより弱い塩基を生成する方向へ平衡が偏る。
このことから、
弱酸の塩 + 強酸 → 強酸の塩 + 弱酸
という反応が進みやすい。
このように、酸塩基反応の進行度は、反応するもの同士の相対的な酸性・塩基性の強さによる。

 

酸性度の強さの序列は下記の通り。
無機酸>カルボン酸>炭酸>フェノール>アルコール>炭素酸

 

無置換フェノールよりも炭酸(H2CO3)の方が酸性度は強いので、
フェノール + 炭酸水素Na → フェノールの塩 + 炭酸
という反応は進みにくい。

 

フェノールの塩(またはフェノキシドアニオン)を生成するには、フェノールに対してフェノールよりも弱い酸の塩(またはアニオン)を反応させる必要がある。
例えば、フェノールよりも弱い酸として水がある。水の共役塩基は水酸化物イオン(OH−)である。よって、解離してOH−を生成するNaOHなどが水の塩に該当する。

 

◆ dについて
d ○ phenolの沸点がtolueneよりも高いのは分子間水素結合を形成しているからである。

 

 ヒドロキシ基(−OH)を有する化合物は分子間で水素結合を形成するので沸点が高くなる。また、水と水素結合を形成できるので水溶性が高くなる(ただし、疎水性基が大きいと水に不溶)。

 

 

◆ eについて
e ○ 2,4,6-trinitrophenolはピクリン酸とよばれる酸性物質であり、炭酸水素ナトリウムと容易に塩を形成する。

 

フェノール類の性質 薬学化学 90回薬剤師国家試験問8

 

フェノールの2,4,6位にニトロ基が置換した2,4,6-trinitrophenolをピクリン酸と呼ぶ。

 

 

ニトロ基の置換は強力な電子求引性電子効果によりフェノールの共役塩基(フェノキシドイオンPh−O-)の負電荷の安定性を高めるので、ピクリン酸は非常に酸性度が強い(pKaは1未満)。無置換のフェノール(pKa:10)は炭酸(pKa1:6.3)よりも弱酸であったが、ピクリン酸(2,4,6-trinitrophenol)は炭酸(H2CO3)よりも強酸である。よって、ピクリン酸(2,4,6-trinitrophenol)は炭酸水素ナトリウムと容易に塩を形成する。

 

ピクリン酸 + 炭酸水素Na → ピクリン酸Na + 炭酸

 

 

◆ fについて
f ○ sodium phenoxideは、十分量の炭酸と反応させるとphenolを遊離する。

 

酸塩基反応は、より弱い酸またはより弱い塩基を生成する方向へ平衡が偏る。
このことから、
弱酸の塩 + 強酸 → 強酸の塩 + 弱酸
という反応が進みやすい。

 

酸性度の強さの序列は下記の通り。
無機酸>カルボン酸>炭酸>フェノール>アルコール>炭素酸

 

無置換フェノールは炭酸(H2CO3)よりも弱酸なので、フェノールの塩と炭酸の反応は、弱酸の塩と強酸という構図になる。よって、sodium phenoxideに十分量の炭酸を加えると下記の反応が進む。

 

Naフェノキシド + H2CO3 → NaHCO3 + フェノール

 

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