カルボニルと芳香環の赤外吸収(IR)スペクトル 82回薬剤師国家試験問38
82回薬剤師国家試験 問38
ある医薬品の赤外吸収スペクトル(KBr錠剤)と紫外吸収スペクトル(メタノ一ル溶液)が示してある(図中の矢印は主な吸収の波数又は波長を示す)。
これらのスペクトルから化学構造を推定し、該当する医薬品を選びなさい。
82回薬剤師国家試験 問38 解答解説
正解は1である。
赤外吸収スペクトルにおいて、
C=O伸縮振動は1800〜1650cm-1の強いピークとして観測される。
また、そのピークの本数からカルボニルの数を推測できる。
(ピークが重なることでカルボニルの数とピークの数が違うことがあるので注意)
設問の1696 cm-1と1656 cm-1の2本のピークより、
2つのカルボニルを有すると考えられる。
設問の254nmの紫外吸収スペクトルより、
芳香環を有すると考えられる。
以上より、正解は1である。
★ 芳香環の赤外吸収スペクトル
設問の1599cm-1のピークは芳香環のC=C伸縮振動に由来し、
704cm- 1のピークは芳香環のC−H変角振動に由来する。
芳香環の赤外吸収スペクトルでは、
1600cm-1または1500cm-1付近のC=C伸縮振動のピーク、
3100〜3000cm-1付近の不飽和結合の炭素のC−H伸縮振動のピーク、
900〜670cm-1付近のC−H面外変角振動のピークなどが確認される。
★ カルボキシル基のO−H伸縮振動
カルボキシル基(COOH)のO−H伸縮振動は
分子同士の水素結合により低波数シフトし、
3200〜2800cm-1付近にピークが現れる。
O−HやN−Hの水素結合による低波数シフトについては下記のリンク先を参照
赤外吸収(IR)スペクトルの水素結合による低波数シフト 95回問34のb