電解質溶液の電気伝導性 87回薬剤師国家試験問19

87回薬剤師国家試験 問19
電解質溶液の電気伝導性に関する記述のうち,正しいものはどれか。

 

a 強電解質のモル電気伝導率Λは濃度増加と共に増加し,濃度と直線関係を示す。これはイオン間相互作用の効果である。
b 電解質溶液の電気伝導性は,無限希釈ではイオン独立移動の法則が成立する。
c KCl,NaClおよびLiClのΛがKCl>NaCl>LiClであるのは,陽イオンの水和イオン半径の効果である。
d HClのΛが他の強電解質と比べ非常に大きいのは,H+イオン半径が小さいためである。
e 酢酸のΛが濃度の増加と共に急激に減少するのは,酢酸イオンのΛが小さいためである。

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87回薬剤師国家試験 問19 解答解説

 

◆ aについて
a × 強電解質のモル電気伝導率Λは濃度増加と共に増加し,濃度と直線関係を示す。これはイオン間相互作用の効果である。
→ 〇 強電解質のモル電気伝導率Λは濃度増加と共に減少し,濃度の平方根(√c)と直線関係を示す。これはイオン間相互作用の効果である。

 

詳細は下記のリンク先を参照
強電解質のモル伝導率と濃度の関係 96回問20ab

 

 

◆ bについて
b 〇 電解質溶液の電気伝導性は,無限希釈ではイオン独立移動の法則が成立する。

 

無限希釈のモル伝導率を極限モル伝導率(Λ0)と呼ぶ。
電解質の極限モル伝導率(Λ0)は、陽イオンと陰イオンの極限モル伝導率の和で表される。
これをコールラウシュのイオン独立移動の法則と呼ぶ。

 

Λ0 = λ0 + λ0
λ0:陽イオンの極限モル伝導率 λ0:陰イオンの極限モル伝導率

 

 

◆ cについて
c 〇 KCl,NaClおよびLiClのΛがKCl>NaCl>LiClであるのは,陽イオンの水和イオン半径の効果である。

 

詳細は下記のリンク先を参照
極限モル伝導率と水和イオン半径 101回問94の5

 

 

◆ dについて
d × HClのΛが他の強電解質と比べ非常に大きいのは,H+イオン半径が小さいためである。

 

H+とOH−のモル伝導率は相対的に非常に大きい。
この理由は、水素結合の生成と切断を介してこれらのイオンの移動が起こるためと考えられている。

 

 

◆ eについて
e × 酢酸のモル伝導率(Λ)が濃度の増加と共に急激に減少するのは,酢酸イオンのΛが小さいためである。
→ 〇 酢酸のモル伝導率(Λ)が濃度の増加と共に急激に減少するのは,酢酸イオンのΛが小さいためである。

 

酢酸のような弱電解質では、
濃度の上昇とともに解離度が低下する。
よって、弱電解質は、
非常に低い濃度では高いモル伝導率を示すが、
濃度が高くなると急激にモル伝導率が小さくなる。

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