水溶液中のイオン間相互作用 101回薬剤師国家試験問94
101回薬剤師国家試験 問94
水溶液中のイオン間相互作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 強電解質のモル伝導率は、濃度に比例して増加する。
2 難溶解性塩であるAgClの溶解度は、NaNO3の添加によるイオン強度の増大とともに増大する。
3 高濃度の強電解質溶液におけるイオンの平均活量係数は、1より大きくなることがある。
4 水中における電解質のイオン間相互作用は、アルコールなどを添加して溶媒の誘電率が低下すると減少する。
5 アルカリ金属における極限モル伝導率は、K+< Na+< Li+ の順に大きくなっている。
101回薬剤師国家試験 問94
◆ 1について
1 × 強電解質のモル伝導率は、濃度に比例して増加する。
→ 〇 強電解質のモル伝導率は、濃度の平方根に比例して減少する。
詳細は下記のリンク先を参照
強電解質のモル伝導率と濃度の関係 96回問20ab
◆ 2について
2 〇 難溶解性塩であるAgClの溶解度は、NaNO3の添加によるイオン強度の増大とともに増大する。
難溶性塩の溶解度について、溶液中に難溶性塩と無関係なイオンが多量に存在すると、
難溶性塩の溶解度が増加する現象を、異種イオン効果と呼ぶ。
難溶性塩AgClの沈殿が存在する飽和溶液に、NaNO3を添加することを考える。
この添加により、AgClが解離して生成するイオン(Ag+とCl−)とは無関係な、
Na+とNO3−という異種イオンが多量に存在するようになると、
溶液のイオン強度が増大し、Ag+とCl−の平均活量係数が1より小さくなり、
AgClの溶解度が増大する。
あるイオンを中心に、それと反対符号を持つイオンが取り囲む構造をイオン雰囲気と呼ぶ。
異種イオンの添加により、溶液のイオン強度が増大すると、イオン雰囲気が増大し、
Ag+とCl−の結合が抑制され、AgClの溶解度が上昇すると考えられる。
◆ 3について
3 〇 高濃度の強電解質溶液におけるイオンの平均活量係数は、1より大きくなることがある。
電解質の希薄溶液では、イオン強度が増大すると、イオン間の相互作用が強くなるため、イオンの平均活量係数は1 より小さくなる。
ただ、高濃度の強電解質溶液におけるイオンの平均活量係数は、1より大きくなることがある。これについて、高濃度ではイオンと溶媒分子との相互作用の影響が大きくなることが要因の1つと考えられている。
◆ 4について
4 × 水中における電解質のイオン間相互作用は、アルコールなどを添加して溶媒の誘電率が低下すると減少する。
→ 〇 水中における電解質のイオン間相互作用は、溶媒の誘電率が低下すると増大する。
詳細は下記のリンク先を参照
イオン間相互作用と媒質の誘電率 101回問94の4
◆ 5について
5 × アルカリ金属における極限モル伝導率は、K+< Na+< Li+ の順に大きくなっている。
→ 〇 アルカリ金属における極限モル伝導率は、Li+< Na+< K+ の順に大きくなる。
一般に、小さいイオンほど移動しやすく、モル伝導率は大きい。
しかし、アルカリ金属は、
イオン半径の小さいものから、Li+< Na+< K+ であるが、
極限モル伝導率はLi+< Na+< K+ の順に大きい。
このことについて、イオン半径の小さいイオンほど強く水和しており、水和すると見かけ上イオン半径が大きくなり、イオンの移動が抑えられ、電気伝導率が低下すると考えられる。
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