沈殿平衡 異種イオン効果と共通イオン効果 93回薬剤師国家試験問19bc

93回薬剤師国家試験 問19bc
沈殿平衡に関する記述の正誤を判定してみよう。

 

b 異種イオン効果とは、溶液中に沈殿物と無関係なイオンが多量に存在すると、沈殿物の溶解度が減少することである。

 

c 共通イオン効果とは、難溶性塩の飽和溶液に共通イオンを加えると、難溶性塩の溶解度が著しく増加することである。

トップページ へ

 

薬剤師国家試験過去問解答解説の科目別まとめ

 

薬剤師国家試験過去問題集 物理 化学平衡 へ

 

 

93回薬剤師国家試験 問19bc 解答解説

 

◆ bについて
b × 異種イオン効果とは、溶液中に沈殿物と無関係なイオンが多量に存在すると、沈殿物の溶解度が減少することである。

 

→ 〇 異種イオン効果とは、溶液中に沈殿物と無関係なイオンが多量に存在すると、沈殿物の溶解度が増加することである。

 

異種イオン効果(塩効果)の例として、難溶性塩AgClの沈殿が存在する飽和溶液に、硝酸HNO3や硫酸H2SO4を添加することを考える。
この添加により、AgClが解離して生成するイオン(AgとCl)とは無関係な、NO3、または、SO42−という異種イオンが多量に存在するようになると、溶液のイオン強度が増大し、AgとClの平均活量係数が1より小さくなり、
AgClの溶解度が増大する。
あるイオンを中心に、それと反対符号を持つイオンが取り囲む構造をイオン雰囲気と呼ぶ。
異種イオンの添加により、溶液のイオン強度が増大すると、イオン雰囲気が増大し、
AgとClの結合が抑制され、AgClの溶解度が上昇すると考えられる。

 

関連問題
AgClの溶解度と異種イオン添加によるイオン強度の増大 101回問94の2

 

 

◆ cについて
c × 共通イオン効果とは、難溶性塩の飽和溶液に共通イオンを加えると、難溶性塩の溶解度が著しく増加することである。

 

→ 〇 共通イオン効果とは、難溶性塩の飽和溶液に共通イオンを加えると、難溶性塩の溶解度が著しく減少することである。

 

共通イオン効果の例として、難溶性塩AgClの沈殿が存在する飽和溶液に、
HClを添加することを考える。

 

AgClの沈殿平衡は、次のように記される。
AgCl(固体) ⇄ Ag + Cl

 

AgClの飽和溶液にHClを加えると、溶液中のClの濃度が増加し、
AgClの沈殿平衡は、AgClの沈殿が増加する方向に移動する。
このように、難溶性塩の飽和溶液に共通イオンを加えると、
難溶性塩の溶解度が著しく減少する。この現象を共通イオン効果と呼ぶ。

 

ただし、共通イオンを大過剰に加えると、沈殿の溶解度が増加する場合もある。
AgClの沈殿が存在する飽和溶液にClを大過剰に加えると、
Ag + Cl ⇄ [AgCl2
[AgCl2 + Cl ⇄ [AgCl32−
[AgCl32− + Cl ⇄  [AgCl43−
という反応が進み、共通イオンであるClの増加により、
結果として、AgClの沈殿の溶解度が増加する。

トップへ戻る