弱酸,弱塩基の見かけの分配係数(分配比)とpHの関係 薬剤師国家試験87回問16d
第87回薬剤師国家試験 問16d
互いに混ざり合わない水相と有機溶媒相間での,溶質の分配平衡に関する記述の正誤を判定してみよう。
d 弱酸の見かけの分配係数は,水相のpHが低いほど小さくなる。
第87回薬剤師国家試験 問16d 解答解説
d × 弱酸の見かけの分配係数は,水相のpHが低いほど小さくなる。
→ 〇 弱酸の見かけの分配係数は,水相のpHが低いほど大きくなる。
→ 〇 弱酸の見かけの分配係数は,水相のpHが高いほど小さくなる。
→ 〇 弱塩基の見かけの分配係数は,水相のpHが低いほど小さくなる。
→ 〇 弱塩基の見かけの分配係数は,水相のpHが高いほど大きくなる。
以下、弱酸性物質および弱塩基性物質の分配平衡について述べる。
★ 弱酸性物質の分配平衡
下の図は、分子形(HA)とイオン形(A−)の2つの化学種になり得る弱酸性物質における水相(w)と有機相(o)の間の分配平衡を表す。
☆ 弱酸の真の分配係数と見かけの分配係数(分配比)
・ 弱酸の真の分配係数
弱酸の真の分配係数とは、
分配平衡に達した時の、
水相の分子形濃度に対する有機相の分子形濃度である。
・ 弱酸の見かけの分配係数(分配比)
弱酸の見かけの分配係数(分配比)とは、
分配平衡に達した時の、
水相の全濃度に対する有機相の全濃度である。
弱酸の全濃度とは、分子形濃度とイオン形濃度の和である。
一般に、有機相にイオン形は移行しないと考えるので、
弱酸の見かけの分配係数は下記の通り。
また、弱酸の見かけの分配係数(分配比D)は、真の分配係数KDとHAの酸解離定数Kaと水素イオン濃度[H+]により下記のように変換される。
弱酸の見かけの分配係数(分配比)の式の変換については
下記のリンク先を参照
弱酸性物質の分配比とpH・pKaの関係
☆ 弱酸性物質における水相のpHの変化と見かけの分配係数の変化
弱酸性物質の分配平衡について、水相のpHが低下した場合と上昇した場合とで分けて述べる。
水相のpHが低下
→ 水相の分子形HAの存在割合が高くなる
→ 有機相に移行する分子形HAの量が増える
→ 見かけの分配係数(分配比)Dが高くなる
水相のpHが上昇
→ 水相の分子形HAの存在割合が低くなる
→ 有機相に移行する分子形HAの量が減る
→ 見かけの分配係数(分配比)Dが低くなる
★ 弱塩基性物質の分配平衡
下の図は、分子形(B)とイオン形(BH+)の2つの化学種になり得る弱塩基性物質における水相(w)と有機相(o)の間の分配平衡を表す。
☆ 弱塩基の真の分配係数と見かけの分配係数(分配比)
・ 弱塩基の真の分配係数
弱塩基の真の分配係数とは、分配平衡に達した時の、水相の分子形濃度に対する有機相の分子形濃度である。
・ 弱塩基の見かけの分配係数(分配比)
弱塩基の見かけの分配係数(分配比)とは、分配平衡に達した時の、水相の全濃度に対する有機相の全濃度である。
弱塩基の全濃度とは、分子形濃度とイオン形濃度の和である。
一般に、有機相にイオン形は移行しないと考えるので、弱塩基の見かけの分配係数は下記の通り。
また、弱塩基の見かけの分配係数(分配比D)は、真の分配係数KDとBH+の酸解離定数Kaと水素イオン濃度[H+]により下記のように変換される。
弱塩基の見かけの分配係数(分配比)の式の変換については
下記のリンク先を参照
弱塩基性物質の分配比とpH・pKaの関係
☆ 弱塩基性物質における水相のpHの変化と見かけの分配係数の変化
弱塩基性物質の分配平衡について、水相のpHが低下した場合と上昇した場合とで分けて述べる。
水相のpHが低下
→ 水相の分子形Bの存在割合が低くなる
→ 有機相に移行する分子形Bの量が減る
→ 見かけの分配係数(分配比)Dが低くなる
水相のpHが上昇
→ 水相の分子形Bの存在割合が高くなる
→ 有機相に移行する分子形Bの量が増える
→ 見かけの分配係数(分配比)Dが高くなる