難溶性電解質の溶解度および溶解度積 88回薬剤師国家試験問21
88回薬剤師国家試験 問21
難溶性電解質MX2は水中では、次式の平衡状態で存在する。
MX2 ⇄ M2+ + 2X−
溶解度および溶解度積に関する記述の正誤を判定してみよう。
a 難溶性電解質MX2の溶解度積Kspは、各イオンの濃度積[M2+][X−]で表せる。
b 難溶性電解質MX2の溶解度積Kspは、[M2+][X−]2で表せる。
c MX2の溶解度をCsatとすると、その溶解度積はKsp=Csat 2である。
d MX2の溶解度をCsatとすると、その溶解度積はKsp=4Csat 3である。
e X−イオンを添加すると、MX2の溶解度は増加する。これを共通イオン効果という。
88回薬剤師国家試験 問21 解答解説
◆ a,bについて
a × 難溶性電解質MX2の溶解度積Kspは、各イオンの濃度積[M2+][X−]で表せる。
b 〇 難溶性電解質MX2の溶解度積Kspは、 [M2+][X−]2で表せる。
溶解度とは、一定量の溶媒に溶ける溶質の最大量であるが、
溶質が難溶性塩の場合、飽和溶液の時の濃度で表される。
難溶性塩MX2の飽和溶液では、
下記の沈殿平衡(溶解平衡)が成立している。
MX2(固体) ⇄ MX2(溶解)
溶解したMX2は、下記のように完全に電離する。
MX2(溶解) → M2+ + 2X−
以上をまとめると、MX2の沈殿平衡は、次のように記される。
MX2(固体) ⇄ M2+ + 2X−
上記の沈殿平衡の平衡定数Kについて次式が成り立つ。
上式において、[MX2(固体)]を一定値とし、
次のように変形する。
K・[MX2(固体)] = [M2+]・[X−]2 = Ksp
KspをMX2の溶解度積という。
Ksp(溶解度積)は、一定温度で物質に固有の値である。
◆ c,dについて
c × MX2の溶解度をCsatとすると、その溶解度積はKsp=Csat 2である。
d 〇 MX2の溶解度をCsatとすると、その溶解度積はKsp=4Csat 3である。
本問では、共存イオンの影響等を考慮する必要のない、MX2の飽和溶液である。
この飽和溶液におけるMX2の溶解度をCsat (mol/L)とおくと、
溶液中の各イオン濃度(mol/L)は、下の図のように表せる。
以上より、
本問の溶液におけるMX2の溶解度積(Ksp)と溶解度(Csat mol/L)の関係式は、
以下のように表される。
Ksp = [M2+]・[X−]2 より、
Ksp = Csat (mol/L)・(2・Csat mol/L)2
Ksp = 4Csat 3 (mol/L)3
◆ eについて
e × X−イオンを添加すると、MX2の溶解度は増加する。これを共通イオン効果という。
→ 〇 X−イオンを添加すると、MX2の溶解度は低下する。これを共通イオン効果という。
共通イオン効果とは、難溶性塩の飽和溶液に共通イオンを加えると、
難溶性塩の溶解度が著しく減少することである。