クロム酸銀の溶解度 純水中,K2CrO4溶液中 95回薬剤師国家試験問19
95回薬剤師国家試験 問19
純水中及び 4.0×10−3 mol/LのK2CrO4水溶液中における
クロム酸銀 Ag2CrO4の溶解度は
それぞれ[ a ]mol/L 及び[ b ]mol/L である。
ただし、Ag2CrO4の溶解度積は 4.0 × 10−12 ( mol/L) 3、
√10 = 3.2である。
[ a ][ b ]に入れべき数値の正しい組合せはどれか。
95回薬剤師国家試験 問19 解答解説
正解は、
選択肢3のa=1.0×10−4,b=1.6×10−5
である。
溶解度とは、一定量の溶媒に溶ける溶質の最大量であるが、
溶質がクロム酸銀のような難溶性塩の場合、飽和溶液の時の濃度で表される。
難溶性塩であるクロム酸銀(Ag2CrO4)の飽和溶液では、
下記の沈殿平衡(溶解平衡)が成立している。
Ag2CrO4(固体) ⇄ Ag2CrO4(溶解)
溶解したAg2CrO4は、下記のように完全に電離する。
Ag2CrO4(溶解) → 2 Ag+ + CrO42−
以上をまとめると、Ag2CrO4の沈殿平衡は、次のように記される。
Ag2CrO4(固体) ⇄ 2 Ag+ + CrO42−
上記の沈殿平衡の平衡定数Kについて、次式が成り立つ。
上式において、[Ag2CrO4(固体)]を一定値とし、
次のように変形する。
K・[Ag2CrO4(固体)] = [Ag+]2・[CrO42−] = Ksp
KspをAg2CrO4の溶解度積という。
Ksp(溶解度積)は、一定温度で物質に固有の値である。
上式を用いて、
設問の各溶液におけるAg2CrO4の溶解度を求める。
@ 純水にAg2CrO4を溶解させたAg2CrO4の飽和溶液
この飽和溶液におけるAg2CrO4の溶解度をS1(mol/L)とおくと、
溶液中の各イオン濃度(mol/L)は、下の図のように表せる。
以上より、純水中のAg2CrO4の溶解度(S1(mol/L))は、
以下のように求められる。
Ksp = [Ag+]2・[CrO42−] より、
Ag2CrO4の溶解度積は 4.0 × 10−12(mol/L)3であるので、
4.0 × 10−12 (mol/L)3 = (2・S1mol/L)2・S1(mol/L)
4.0 × 10−12 (mol/L)3 = 4 S12・S1 (mol/L)3
4.0 × 10−12 (mol/L)3 = 4 S13 (mol/L)3
S1 = 1.0 × 10−4
したがって、純水中のAg2CrO4の溶解度は、
1.0 × 10−4 ( mol/L )である。
A 4.0×10−3mol/LのK2CrO4水溶液中にAg2CrO4を溶解させたAg2CrO4の飽和溶液
K2CrO4水溶液中におけるAg2CrO4の溶解度は、
クロム酸イオン(CrO42−)について、共通イオン効果を考慮する必要がある。
4.0×10−3mol/LのK2CrO4水溶液中におけるAg2CrO4の溶解度をS2(mol/L)とおくと、
溶液中の各イオン濃度(mol/L)は、下の図のように表せる。
クロム酸イオン濃度([CrO42−])は、
Ag2CrO4由来の値(S2 mol/L)とK2CrO4由来の値(4.0×10−3mol/L)の合計であるが、
Ag2CrO4由来のクロム酸イオン濃度は、K2CrO4由来のクロム酸イオン濃度に比べて、
非常に小さいと考えられる。
よって、クロム酸イオン濃度([CrO42−])は、厳密には、
[CrO42−]=(4.0×10−3+S2)mol/L だが、
4.0×10−3>>S2 より、
[CrO42−]≒4.0×10−3mol/L とみなせる。
以上より、4.0×10−3 mol/LのK2CrO4水溶液中におけるAg2CrO4の溶解度(S2(mol/L))は、以下のように求められる。
Ksp = [Ag+]2・[CrO42−] より、
Ag2CrO4の溶解度積は 4.0 × 10−12(mol/L)3であるので、
4.0 × 10−12(mol/L)3 = (2・S2 mol/L)2・4.0×10−3 (mol/L)
4.0 × 10−12(mol/L)3 = 4 S22・4.0×10−3 (mol/L)
4.0 × 10−12(mol/L)3 = 16 S22×10−3(mol/L)3
S22 = 2.5 × 10−10
S22 = 25×10×10−12
S2 = 5×√10×10−6
S2 = 5×3.2×10−6
S2 = 1.6×10−5
したがって、4.0×10−3 mol/LのK2CrO4水溶液中におけるAg2CrO4の溶解度は、
1.6×10−5 ( mol/L )である。
K2CrO4水溶液中におけるAg2CrO4の溶解度は、
クロム酸イオン(CrO42−)の共通イオン効果により、
純水中のAg2CrO4の溶解度より低くなる。