硫酸ナトリウム水溶液中における硫酸バリウムの溶解度 107薬剤師国家試験問4
107回薬剤師国家試験 問4
0.10 mol/L 硫酸ナトリウム水溶液中における硫酸バリウムの溶解度に最も近いのはどれか。1つ選びなさい。
107回薬剤師国家試験 問4 解答解説
硫酸バリウムの溶解度に最も近いのは、
選択肢3の1.0×10−9(mol/L)である。
溶解度とは、一定量の溶媒に溶ける溶質の最大量であるが、
溶質が硫酸バリウムのような難溶性塩の場合、飽和溶液の時の濃度で表される。
本問では、0.10 mol/L 硫酸ナトリウム水溶液において、
硫酸バリウムの沈殿が生成している溶液をイメージする。
この溶液は、硫酸バリウムの飽和溶液であり、硫酸バリウムの沈殿平衡が成立している。
これを踏まえ、硫酸バリウムの溶解度積の式から、硫酸バリウムの溶解度を計算する。
以下、詳細
難溶性塩である硫酸バリウム(BaSO4)の飽和溶液では、
下記の沈殿平衡(溶解平衡)が成立している。
BaSO4(固体) ⇄ BaSO4(溶解)
溶解したBaSO4は、下記のように完全に電離する。
BaSO4(溶解) → Ba2+ + SO42−
以上をまとめると、BaSO4の沈殿平衡は、次のように記される。
上式において、[BaSO4(固体)]を一定値とし、
次のように変形する。
K・[BaSO4(固体)] = [Ba2+]・[SO42−] = Ksp
KspをBaSO4の溶解度積という。
Ksp(溶解度積)は、一定温度で物質に固有の値である。
上式を用いてBaSO4の溶解度を求める。
本問では、0.10 mol/L硫酸ナトリウム水溶液中における硫酸バリウムの溶解度なので、
硫酸イオン(SO42−)について、共通イオン効果を考慮する必要がある。
0.10 mol/L硫酸ナトリウム水溶液中における硫酸バリウムの溶解度をCs(mol/L)とおくと、溶液中の各イオン濃度(mol/L)は下の図のように表せる。
硫酸イオン濃度([SO42−])は、厳密には、
BaSO4由来の値(Cs)とNa2SO4由来の値(0.10mo/L)の合計であるが、
BaSO4由来の硫酸イオン濃度は、Na2SO4由来の硫酸イオン濃度に比べて、
非常に小さいと考えられる(Cs<<0.10(mol/L))。
よって、硫酸イオン濃度は、
[SO42−] ≒ Cs + 0.10(mol/L) ≒ 0.10(mol/L)
とみなせる。
したがって、求めるBaSO4の溶解度は、
BaSO4の溶解度積の式を用いて下記のように計算できる。
Ksp = [Ba2+]・[SO42−]
1.0×10−10(mol/L)2 = Cs・0.10(mol/L)
Cs = 1.0×10−9 (mol/L)
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