芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

107回薬剤師国家試験 問104
次の反応のうち、主生成物の構造を正しく示しているのはどれか。1つ選びなさい。
ただし、各反応はそれぞれ適切な溶媒を用いて行い、反応終了後、適切な後処理を施したものとする。

 

芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

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薬剤師国家試験過去問題集 化学 芳香族化合物

 

 

107回薬剤師国家試験 問104 解答解説

 

芳香族求電子置換反応について、
置換基による配向性を問う問題である。

 

芳香族求電子置換反応の配向性については
下記のリンク先を参照
芳香族求電子置換反応の配向性・反応性

 

 

◆ 1について
芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

設問の主生成物の構造はメタ置換体であるが、これは誤りである。
主生成物はパラ置換体だと考えられる。

 

芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

アセトアニリドは芳香環にアミドのアミノ基が置換しているとみなせる。
アミノ基(アミドのアミノ基を含む)は電子供与性共鳴効果(+R)によりオルト・パラ配向性を示すが、
アミドのかさ高さによる立体障害のため、オルト位での置換反応は起こりにくい。
よって、本問の反応ではパラ置換体が主生成物となる。
なお、アミノ基の置換により芳香環の電子密度は無置換の場合よりも高まっているため、
ルイス酸なしで、かつ、室温でも芳香族求電子置換反応のハロゲン化は進行すると考えられる。

 

芳香族求電子置換反応のハロゲン化については下記のリンク先を参照
芳香族求電子置換反応 ハロゲン化 反応機構 85回問10の2,5

 

 

◆ 2について
芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

設問の主生成物の構造はメタ置換体であるが、これは誤りである。
主生成物はオルト置換体またはパラ置換体だと考えられる。

 

芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

メチル基のようなアルキル基は超共役によりオルト・パラ配向性を示す。
超共役については下記のリンク先を参照
超共役とは?

 

なお、メチル基の置換により芳香環の電子密度は無置換の場合よりも高まっているため、
室温でも求電子置換反応は進行すると考えられる。

 

 

◆ 3について
芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

設問の主生成物の構造はオルト置換体またはパラ置換体であるが、これは誤りである。
主生成物はメタ置換体だと考えられる。

 

芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

=O,=N,=SといったO,N,Sの不飽和結合を含む官能基は電子求引性共鳴効果を与えるので、
メタ配向性となる。

 

なお、O,N,Sの不飽和結合を含む置換基により芳香環の電子密度は無置換の場合よりも低下するため、
反応の進行には加熱が必要だと考えられる。

 

 

◆ 4について
芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

設問の主生成物の構造は誤りである。
二置換の芳香環の求電子置換反応の配向性について、
2つの置換基のうちで相対的に電子供与性が強い方の置換基を基点とした配向性となる。

 

反応4の化合物の芳香環にはヒドロキシ基とメチル基(アルキル基)が置換しており、
芳香環に対してヒドロキシ基もアルキル基も電子供与性電子効果を与えるが、
ヒドロキシ基の方が相対的に電子供与性は強い。

 

よって、本問の求電子置換反応の配向性はヒドロキシ基を基点としたオルト・パラ配向性となり、
主生成物は下記の構造であると考えられる。

 

芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

なお、ヒドロキシ基とメチル基の置換により芳香環の電子密度は無置換の場合よりも高まっているため、
ルイス酸なしで、かつ、室温でも芳香族求電子置換反応のハロゲン化は進行すると考えられる。

 

関連問題
二置換ベンゼンの求電子置換反応の配向性 98回問102の1,3

 

二置換ベンゼンの求電子置換反応の位置選択性 101回問103の4

 

 

◆ 5について
芳香族置換反応の配向性 107回薬剤師国家試験問104

 

反応5の主生成物の構造は正しい。
ハロゲンは芳香環に対して電子供与性共鳴効果を与えるため、オルト・パラ配向性となる。
反応性について、ハロゲンは芳香環に対して電子供与性の共鳴効果(+R)と電子求引性の誘起効果(−I)を与えるが、ハロゲンでは−Iの方が+Rよりも強いため、結果として、芳香環に対して総合的に電子求引性の電子効果を与えることになり、無置換の場合よりも芳香環の電子密度は低く、反応性は低い。

 

なお、芳香族化合物の求電子置換反応のスルホン化は可逆反応である。
詳細は下記のリンク先を参照
88回問8d

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