ダニエル電池の標準起電力 110回薬剤師国家試験問1
110回薬剤師国家試験 問1
図はダニエル電池(Zn/ZnSO4(aq)|CuSO4(aq)/Cu)の模式図である。
この電池の標準起電力として正しいのはどれか。1つ選びなさい。
ただし、ZnとCuの半電池の標準電極電位はそれぞれ−0.763Vと+0.337Vとする。
1 +0.213V
2 +0.426V
3 +1.100V
4 −0.426V
5 −1.100V
110回薬剤師国家試験 問1 解答解説
この電池の標準起電力として正しいのは、
選択肢3の+1.100Vである。
ダニエル電池について、
各半電池の状態、および、標準起電力は下の図のようになると考えられる。
以下、詳細を解説
◆ ダニエル電池の成り立ち
電池とは、電位差を作り出すことにより、電子の流れと電流を生じさせるものを指し、
結果として、電池は電気エネルギー,電気的仕事を発生させる。
化学電池は、化学反応により、電子の流れと電流を生じさせ、
電気エネルギーを取り出す装置である。
電子のエネルギーと電位の関係について、
電位が低いほど電子のエネルギーは高く、
電位が高いほど電子のエネルギーは低い。
電子は、エネルギーが低くなる方へと移動するので、
電位が低い方から高い方へと流れる。
このことから、
電極電位(酸化還元電位)に差のある2つの半電池を導線でつなぐと、
電子は、電極電位の低い電極から、
導線を伝って電極電位の高い電極に移動しようとする。
そのため、化学電池では、
電極電位の低い半電池で酸化反応が起こり、
電極電位の高い半電池で還元反応が起こる。
酸化反応が起こる電極を負極,アノードと呼び、
還元反応が起こる電極を正極,カソードと呼ぶ。
電子は負極から正極に流れ、
電流(正電荷の流れ)は、
電子の流れとは逆方向に正極から負極流れる。
ダニエル電池は、亜鉛半電池と銅半電池から成り、
亜鉛半電池の標準電極電位は−0.763Vであり、
銅半電池の標準電極電位は+0.337Vである。
標準電極電位の低い亜鉛半電池では、
下記の酸化反応が起こり、電子が流出する。
Zn → Zn2+ + 2e−
亜鉛半電池が負極,アノードとなる。
標準電極電位の高い銅半電池では、
下記の還元反応起こり、電子が流入する。
Cu2+ + 2e− → Cu
銅半電池が正極,カソードとなる。
◆ 化学電池の起電力
起電力とは、電流の駆動力であり、
化学電池の起電力は、両半電池間の電位の差(電圧)である。
化学電池の起電力は、酸化反応が起こる半電池の電位を基準とし、
還元反応が起こる半電池の電位との差で表される。
電池の起電力 = (正極の電位) − (負極の電位)
電池の標準起電力は、各半電池の標準電極電位の差である。
標準起電力 = (正極の標準電極電位)−(負極の標準電極電位)
よって、ダニエル電池の標準起電力は下記のように計算される。
ダニエル電池の標準起電力
=(銅半電池の標準電極電位)−(亜鉛半電池の標準電極電位)
=(+0.337V)−(−0.763V)
= +1.100V
◆ 物質のイオン化傾向と半電池の電位の関係
一般に、イオン化傾向が大きい物質ほど、半電池の標準電極電位は低い。
よって、化学電池では、
イオン化傾向の大きい物質から成る半電池で酸化反応が起こり、
イオン化傾向の小さい物質から成る半電池で還元反応が起こる。