薬物のタンパク結合がLangmuir型で表される場合 91回薬剤師国家試験問154
91回薬剤師国家試験 問154
薬物のタンパク結合がLangmuir型で表されるとき、次の記述について、正しいものはどれか。
a タンパク質が薬物分子に対して同じ親和性をもつとき、横軸に薬物の非結合形濃度の逆数、縦軸にタンパク質1分子当たりの結合形薬物分子数の逆数をとると右上がりの直線が得られ、縦軸との切片の逆数はタンパク質1分子当たりの薬物の結合部位数となる。
b 結合定数が大きい薬物では、薬物濃度がある限度以上になると、血漿中の非結合形分率が急激に増大し、過度の薬効を発現する場合がある。
c タンパク結合における競合的阻害現象がある場合、阻害物質の存在で、当該薬物の見かけの結合定数が減少するが、タンパク質の結合部位の数には変化はない。
d フェニルブタゾンは、ワルファリンの血漿タンパク結合を非競合的に阻害する。
91回薬剤師国家試験 問154 解答解説
◆ a,b,cについて
a ○ タンパク質が薬物分子に対して同じ親和性をもつとき、横軸に薬物の非結合形濃度の逆数、縦軸にタンパク質1分子当たりの結合形薬物分子数の逆数をとると右上がりの直線が得られ、縦軸との切片の逆数はタンパク質1分子当たりの薬物の結合部位数となる。
b ○ 結合定数が大きい薬物では、薬物濃度がある限度以上になると、血漿中の非結合形分率が急激に増大し、過度の薬効を発現する場合がある。
c ○ タンパク結合における競合的阻害現象がある場合、阻害物質の存在で、当該薬物の見かけの結合定数が減少するが、タンパク質の結合部位の数には変化はない。
薬物とタンパク質との結合について、
下記のLangmuir式(ラングミュア式)がある。
薬物とタンパク質との結合がラングミュア式に従う場合、
縦軸にr、横軸に[Df]をプロットとすると、
下記のような曲線となる。
上記の通り、薬物のタンパク結合がラングミュア型で表される場合、
結合定数が大きい薬物では、薬物の血中濃度が高くなると、
薬物の血漿タンパク結合が飽和し、血漿中の非結合形分率が急激に増大し、
過度の薬効を発現する場合がある。
ラングミュア式を変形すると、
以下に示す両逆数プロットの式が得られる。
両逆数プロットの式より、
縦軸に1/r、
横軸に1/[Df]をプロットして得られる直線(両逆数プロット)について、
縦軸切片は1/n、横軸切片は−K、傾きは1/(n・K)に等しい。
本問の薬物のタンパク結合が競合的に阻害された場合、
結合定数(K)は低下し、結合部位数(n)は変化しない。
下記の両逆数プロットにおいて、
実線が単独投与の場合を表し、
点線が競合阻害がある場合を表す。
一方、本問の薬物のタンパク結合が非競合的に阻害される場合は、
タンパク質の構造が変化することにより、
結合部位数(n)は減少するが、結合定数(K)は変化しない。
下記の両逆数プロットにおいて、
実線が単独投与の場合を表し、
点線が競合阻害がある場合を表す。
◆ dについて
d × フェニルブタゾンは、ワルファリンの血漿タンパク結合を非競合的に阻害する。
→ 〇 フェニルブタゾンは、ワルファリンの血漿タンパク結合を競合的に阻害する。
ワルファリンとフェニルブタゾンは、どちらも血漿タンパク結合率が非常に高い薬物であるため、
併用すると、ワルファリンの血漿タンパク結合が競合的に阻害され、
ワルファリンの非結合型が増えることが考えられる。