薬物の生体内分布に関する記述 105回薬剤師国家試験問170

105回薬剤師国家試験 問170
薬物の生体内分布に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 腎臓や小腸粘膜の毛細血管は有窓内皮であるため、低分子薬物は窓構造に存在する小孔を介して毛細血管を透過できる。
2 皮下に投与された分子量5000以下の薬物は、毛細血管よりも毛細リンパ管に移行しやすい。
3 アルブミンは血漿中に約4 g/dL 存在し、プロプラノロールやイミプラミンのような塩基性薬物と強く結合する。
4 プラバスタチンは肝細胞の血液側細胞膜に発現する有機アニオントランスポーターOATP1B1を介して細胞内に取り込まれる。
5 血漿タンパク結合率が高い弱酸性薬物は、乳汁中への移行性が高い。

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105回薬剤師国家試験 問170 解答解説

 

◆ 1について
1 ○ 腎臓や小腸粘膜の毛細血管は有窓内皮であるため、低分子薬物は窓構造に存在する小孔を介して毛細血管を透過できる。

 

毛細血管内皮のうち、有窓内皮は、腎臓や消化管などにみられ、
内皮細胞同士が比較的に密に接しているが、膜が薄くなっている窓が点在している。
窓には小孔があり、低分子薬物はこの小孔を介して透過できる。高分子は透過できない。

 

関連問題
肝臓の毛細血管壁の構造 95回問155d

 

 

◆ 2について
2 × 皮下に投与された分子量5000以下の薬物は、毛細血管よりも毛細リンパ管に移行しやすい。
→ ○ 皮下に投与された分子量5000以下の薬物は、毛細リンパよりも毛細血管に移行しやすい。

 

薬物の体内循環を担うものとして、血液とリンパ液がある。
毛細リンパ管は、毛細血管に比べて細胞間隙が広いため、より大きな分子が透過できる。
薬物が筋肉内投与や皮下投与などで組織間隙中に投与された場合、
分子量5000以下の薬物は、毛細リンパ管よりも毛細血管に移行しやすく、
分子量5000以上の薬物は、毛細血管へは移行せず、毛細リンパ管に移行する。

 

 

◆ 3について
3 × アルブミンは血漿中に約4 g/dL 存在し、プロプラノロールやイミプラミンのような塩基性薬物と強く結合する。

 

アルブミンは血漿中に約4 g/dL 存在し、酸性薬物と強く結合する。
なお、プロプラノロールやイミプラミンのような塩基性薬物と強く結合する血漿タンパク質として、
α1-酸性糖タンパク質がある。

 

 

◆ 4について
4 ○ プラバスタチンは肝細胞の血液側細胞膜に発現する有機アニオントランスポーターOATP1B1を介して細胞内に取り込まれる。

 

有機アニオントランスポーターOATP1B1は、肝細胞の血液側細胞膜に存在し、
血液中の有機アニオン性物質の細胞内への取り込みに関与する。
スタチン系薬物は有機アニオン性薬物であるため、
OATP1B1を介して血液中から肝細胞内へ取り込まれる。

 

 

◆ 5について
5 × 血漿タンパク結合率が高い弱酸性薬物は、乳汁中への移行性が高い。
→ 〇 血漿タンパク結合率が低い弱塩基性薬物は、乳汁中への移行性が高い。

 

薬物の母体の血液から乳汁への移行は、
主に線上皮細胞を単純拡散により透過することで起こり、
pH分配仮説に従うと考えられている。
血漿中で分子形となった薬物が乳汁中へ移行するが、
乳汁は弱酸性であるため、弱塩基性薬物は乳汁中に移行するとイオン形になりやすく、
イオン形になると血漿に戻れなくなるので、
弱塩基性薬物は弱酸性薬物よりも乳汁中への移行性が高い。

 

また、血漿中から乳汁中に移行するのは非結合型薬物であるので、
血漿タンパク結合率の低い薬物は、乳汁中への移行性が高い。

 

関連問題
薬物の乳汁移行に関する総合問題 103回問195

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
105回問170(e-RECさん)

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