薬物のアルブミンに対する結合定数の計算 90回薬剤師国家試験問154

90回薬剤師国家試験 問154
ある薬物のアルブミンに対する結合定数を、半透膜の袋を用いた平衡透析法により測定した。袋の内液中のアルブミンの濃度を2.4 mmol/L、外液中の薬物初濃度を1.0 mmol/Lとし、平衡状態に達したときの外液中の薬物濃度を測定したところ、0.3mmol/Lであった。薬物の結合定数K (L/mmol)として最も近い値は次のどれか。ただし、アルブミン1分子当たりの薬物の結合部位数を1とする。また、内液及び外液の容積は同じで、薬物もアルブミンも容器や膜には吸着しないものとする。

 

1 0.05
2 0.1
3 0.3
4 0.5
5 0.7

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90回薬剤師国家試験 問154 解答解説

 

正解は、選択肢5の0.7 L/mmolである。

 

タンパク質1分子に薬物1分子が結合する場合、
薬物のタンパク質に対する結合は、次式で表される。
Pf + Df ⇄ P−D

 

Pf:非結合型タンパク質
Df:非結合型薬物
P−D:タンパク質−薬物複合体

 

この可逆反応の平衡定数は、薬物のタンパク質に対する結合定数Kと呼ばれ、
次式で表される。

 

薬物のアルブミンに対する結合定数の計算 90回薬剤師国家試験問154

 

平衡透析法においては、非結合型薬物のみが半透膜を透過し、
平衡状態では、2つのセルの非結合型薬物濃度は等しくなる。
タンパク質溶液側の薬物濃度は、結合型薬物濃度+非結合型薬物濃度であり、
緩衝液側(タンパク質が無い溶液側)の薬物濃度は、非結合型薬物濃度である。

 

本問では、最初、外液の緩衝液側(タンパク質が無い溶液側)のみに薬物が入っており、
その濃度は1.0mmol/Lであった。
平衡状態に達すると、緩衝液側の薬物濃度は0.3mmol/L であった。
この結果より、
平衡状態の結合型薬物濃度と非結合型薬物濃度を次のように算出できる。

 

平衡状態の外液の緩衝液側の薬物濃度が0.3mmol/Lであるので、
外液と内液の非結合型薬物濃度 = 0.3mmol/L である。

 

実験開始時の外液の緩衝液側の薬物初濃度が1.0 mmol/Lであり、
平衡状態の外液と内液の非結合型薬物濃度が0.3mmol/Lであるので、
平衡状態の内液の結合型薬物濃度は、次のように求められる。
結合型薬物濃度 = 1.0 mmol/L − 2×0.3mmol/L
        = 1.0mmol/L − 0.6mmol/L
        = 0.4mmol/L

 

さらに、平衡状態の非結合型アルブミン濃度も以下のように求められる。
実験開始時の内液のアルブミン濃度が2.4mmol/Lであるので、
平衡状態のアルブミン濃度について、次式が成り立つ。
非結合型アルブミン濃度 = 2.4 mmol/L−結合型アルブミン濃度

 

本問では、アルブミン1分子に薬物1分子が結合するので、
結合型アルブミン濃度 = 結合型薬物濃度 が成り立つ。
したがって、
非結合型アルブミン濃度 = 2.4 mmol/L−0.4mmol/L = 2.0mmol/L

 

以上より、本問の結合定数Kを次のように計算できる。

 

薬物のアルブミンに対する結合定数の計算 90回薬剤師国家試験問154

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