薬物の組織分布に関する記述 101回薬剤師国家試験問167
101回薬剤師国家試験 問167
薬物の組織分布に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 組織移行性の大きい薬物の分布容積は、血漿容積に近い値となる。
2 組織成分との結合が強い薬物の分布容積は、総体液量を超えることがある。
3 薬物の組織分布が平衡に達すると、血漿中と組織中の非結合形分率は等しくなる。
4 組織中非結合形分率に対する血漿中非結合形分率の比が大きい薬物ほど、分布容積は大きい。
5 炎症性疾患時にはα1−酸性糖タンパク質の血漿中濃度が低下し、塩基性薬物の分布容積が増大する。
101回薬剤師国家試験 問167 解答解説
◆ 1,2,3,4について
1 × 組織移行性の大きい薬物の分布容積は、血漿容積に近い値となる。
→ ○ 組織移行性の大きい薬物の分布容積は、血漿容積よりも大きい値となる。
2 ○ 組織成分との結合が強い薬物の分布容積は、総体液量を超えることがある。
3 × 薬物の組織分布が平衡に達すると、血漿中と組織中の非結合形分率は等しくなる。
→ 〇 薬物の組織分布が平衡に達すると、血漿中と組織中の非結合形濃度は等しくなる。非結合型分率が等しいとは限らない。
4 ○ 組織中非結合形分率に対する血漿中非結合形分率の比が大きい薬物ほど、分布容積は大きい。
分布容積とは、薬物の組織移行性の指標であり、
組織移行性が大きいほど、分布容積の値は大きくなる。
体内全薬物量をX、薬物の血漿中濃度をCpとすると、
分布容積(Vd)は、次式で表される。
体内全薬物量(X)は、次式で表される。
X = Xp + Xt
Xp:血漿中薬物量
Xt:組織中薬物量
血漿中薬物量(Xp)は、次式で表される。
Xp = Cp・Vp
Cp:薬物の血漿中濃度
Vp:血漿容積
組織中薬物量(Xt)は、次式で表される。
Xt = Ct・Vt
Ct:薬物の組織中濃度
Vt:組織容積
以上より、
体内全薬物量(X)は、次式で表される。
X = Cp・Vp + Ct・Vt
Cp:薬物の血漿中濃度 Vp:血漿容積
Ct:薬物の組織中濃度 Vt:組織容積
したがって、
分布容積(Vd)は、次式で表される。
非結合型薬物のみ、血管の内外を行き来でき、
薬物の組織分布が平衡に達すると、血漿中と組織中の非結合形薬物濃度は等しくなる。
このことから、次式が成り立つ。
fp・Cp = ft・Ct
fp:血漿非結合型分率 Cp:薬物の血漿中濃度
ft:組織非結合型分率 Ct:薬物の組織中濃度
上式より、次のA式が成り立つ。
B式より、ft(組織非結合型分率)が小さいほど、
分布容積は大きくなる。
選択肢2の記述通り、
組織成分との結合が強い薬物の分布容積は、総体液量を超えることがある。
また、B式より、
fp/ftが大きいほど、分布容積は大きくなる。
したがって、選択肢4の記述通り、
組織中非結合形分率に対する血漿中非結合形分率の比が大きい薬物ほど、
分布容積は大きいと考えられる。
◆ 5について
5 × 炎症性疾患時にはα1−酸性糖タンパク質の血漿中濃度が低下し、塩基性薬物の分布容積が増大する。
→ 〇 炎症性疾患時にはα1−酸性糖タンパク質の血漿中濃度が上昇し、塩基性薬物の分布容積が減少する。
α1−酸性糖タンパク質は、塩基性薬物と強く結合する血漿タンパク質であり、
炎症性疾患、心筋梗塞、外傷などで血漿中濃度が上昇する。また、高齢者は、α1−酸性糖タンパク質の血漿中濃度が上昇する。
炎症性疾患時には、α1−酸性糖タンパク質の血漿中濃度が上昇し、
塩基性薬物では、血漿タンパク結合率が上昇するので、分布容積は減少する。
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