血液脳関門透過速度と分配係数 眠くならないアレルギー薬 99回薬剤師国家試験問268−269
99回薬剤師国家試験 問268−269
32歳女性。消化器外来に通院中。数日前からじん麻疹を発症し、抗アレルギー薬が追加処方されることになった。担当医師から薬剤師に対して、「患者がなるべく眠くならない薬剤を希望しているが、推奨できるものは何か」と問い合わせがあった。
問268(実務)
薬剤師が推奨すべき抗アレルギー薬として、最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 シプロヘプタジン塩酸塩水和物
2 エバスチン
3 フェキソフェナジン塩酸塩
4 セチリジン塩酸塩
5 ホモクロルシクリジン塩酸塩
問269(薬剤)
図は薬物の血液脳関門透過速度と1-オクタノール/水分配係数の関係を示したものである。
前問で選択した薬物について、正しい記述はどれか。1つ選びなさい。
ただし、B群の薬物においては血液脳関門透過速度と分子量で補正した分配係数との間に、図に示す直線関係がみられている。
1 アミノ酸やグルコースなどの栄養物質と同様にA群に属する。
2 B群に属し、血液脳関門透過はpH分配仮説に従う。
3 B群に属し、脳内への移行にトランスポーターが関与している。
4 レボドパやバクロフェンと同様にC群に属する。
5 C群に属し、P−糖タンパク質によって脳内への移行が妨げられる。
99回薬剤師国家試験 問268 解答解説
眠くならない薬剤を希望する患者について、
推奨すべき抗アレルギー薬として最も適切なのは、
選択肢3のフェキソフェナジン塩酸塩である。
シプロヘプタジン塩酸塩水和物(ペリアクチン),エバスチン(エバステル),
セチリジン塩酸塩(ジルテック),ホモクロルシクリジン塩酸塩では、
添付文書の重要な基本的注意の項で、
「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること」と記載されている。
一方、フェキソフェナジン塩酸塩(アレグラ)の添付文書には上記の記載はない。
99回薬剤師国家試験 問269 解答解説
フェキソフェナジンについて、正しい記述は、
選択肢5の「C群に属し、P−糖タンパク質によって脳内への移行が妨げられる。」
である。
P−糖タンパク質(MDR1)は、一次性能動輸送担体の1種であり、
薬物を含む異物を体外に排出するために、物質を細胞内から細胞外へ排出する。
血液脳関門の実体である脳毛細血管内皮細胞では、
P-糖タンパク質は血液側の細胞膜に発現し、
異物を細胞内から血液中へ排出し、異物の脳内への移行を制限している。
図のC群は、1-オクタノール/水分配係数によらず、血液脳関門の透過速度が低い。
これは、P−糖タンパク質により脳内への移行が妨げられているためと考えられる。
フェキソフェナジンは、P−糖タンパク質の基質であり、
脳内へ移行しにくいため、眠気を催しにくいと考えられる。
A群は、分配係数は小さいが、血液脳関門の透過速度が大きい。
これは、血液脳関門のトランスポーターにより、
血液から脳内に輸送されているためと考えられる。
A群に属するものとして、アミノ酸,グルコースなどの栄養物質や、
レボドパ,バクロフェンなど一部の薬剤が挙げられる。
B群は、血液脳関門透過速度と分配係数との間に、直線関係がみられる。
これは、pH分配仮説に従い、単純拡散により血液脳関門を透過していることを示す。
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