アセトアミノフェンの乳汁移行性 106回薬剤師国家試験問268−269

106回薬剤師国家試験 問268−269
38歳女性。腰痛のため近医を受診したところ以下の薬剤を処方され、
1歳0ヶ月の幼児(体重9kg)を伴って薬局を訪れた。

 

106回薬剤師国家試験問268,269 アセトアミノフェンの乳汁移行性

 

幼児は、1回の授乳で200mL程度の母乳を飲むことがあるとのこと。
母乳による育児の継続を強く望んでいるが、
薬の服用後に母乳中に薬が移行して子どもに影響することに不安を持っているとのことであった。
アセトアミノフェンの乳汁/血漿中薬物濃度比は0.91〜1.4とされている。
また、アセトアミノフェン錠の添付文書から薬物動態及び用法・用量に関する以下の情報を得た。

 

106回薬剤師国家試験問268,269 アセトアミノフェンの乳汁移行性

 

問268(薬剤)
患者が指示どおりに服用した場合、乳汁200mLあたりに含まれるアセトアミノフェン量は、保育する幼児における最低用量に対し、最大で何%に達する可能性があるか。
最も近い値を1つ選びなさい。
なお、アセトアミノフェンの血漿から乳汁への分布は速やかに平衡状態に達するものとする。
1 2.8
2 9.0
3 25
4 90
5 250

 

問269(実務)
薬剤師の患者への説明として最も適切なのはどれか。1つ選びなさい。
1 母乳中への薬物の移行量が多いので、処方の中止を医師に連絡する必要があります。
2 母乳中への薬物の移行量は少量ですが、授乳は中止してください。
3 母乳と粉ミルクで育児に大きな違いはないので、授乳を中止するのが無難です。
4 母乳中への薬物の移行量は少量であり、薬剤服用中でも授乳可能です。
5 ロキソプロフェン錠に変更すれば、母乳中に薬物が移行しないので安全です。

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106回薬剤師国家試験 問268 解答解説

 

本問では、アセトアミノフェン400mgを経口投与した場合について、
下記のパーセンテージを求める。

 

106回薬剤師国家試験問268,269 アセトアミノフェンの乳汁移行性

 

まず、乳汁200mLあたりに含まれるアセトアミノフェンの最大量を求める。
アセトアミノフェンの乳汁/血漿中薬物濃度比は0.91〜1.4であるが、
本問では乳汁中に含まれる最大量を求めるので、1.4として計算する。

 

問題文に、
「成人にアセトアミノフェン400mgを経口単回投与後の最高血漿中濃度は9.0ng/mL であり、投与12 時間後には血漿中からほぼ完全に消失していた。」とあるので、
乳汁200mLあたりに含まれるアセトアミノフェンの最大量は、次のように求められる。
  9.0ng/mL ×(乳汁/血漿中薬物濃度比) × 200mL
= 9.0ng/mL ×1.4× 200mL
= 2.52mg

 

次に、アセトアミノフェンの保育する幼児における最低用量を求める。
問題文中に、
「通常、幼児にはアセトアミノフェンとして、体重1kgあたり1回10〜15mgを経口投与する。」とあり、
本問の幼児の体重は9kgである。
よって、アセトアミノフェンの保育する幼児における最低用量は、
10mg/kg × 9kg = 90mg である。

 

以上より、求めるパーセンテージは、次のように計算できる。

 

106回薬剤師国家試験問268,269 アセトアミノフェンの乳汁移行性

 

 

106回薬剤師国家試験 問269(実務) 解答解説

 

薬剤師の患者への説明として最も適切なのは、
選択肢4の「母乳中への薬物の移行量は少量であり、薬剤服用中でも授乳可能です。」
である。
アセトアミノフェンは幼児にも使用される薬剤であり、
本問の用量では、母乳中の移行量は少量であるため、
薬剤を服用しながら授乳を継続できると考えられる。

 

選択肢5について、
ロキソプロフェンは、乳汁中へ移行すると考えられているので、不適切である。

 

 

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106回問268,269(e-RECさん)

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