血液脳関門に関する記述 98回薬剤師国家試験問168
98回薬剤師国家試験 問168
血液脳関門に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 血液脳関門の実体は、脈絡叢上皮細胞である。
2 分子量の大きな薬物は、血液脳関門を透過しやすい。
3 血液脳関門には種々の栄養物質の輸送系が存在し、一部の薬物はこの輸送系によって脳内へ分布する。
4 薬物の水溶性が高いほど、単純拡散による脳への移行性は大きい。
5 脳毛細血管内皮細胞に存在するP−糖タンパク質は、一部の薬物の脳内移行を妨げている。
98回薬剤師国家試験 問168 解答解説
◆ 1について
1 × 血液脳関門の実体は、脈絡叢上皮細胞である。
→ 〇 血液脳関門の実体は、脳毛細血管内皮細胞である。
脳毛細血管内皮細胞は、細胞同士が密着結合により強固に連結しており、
循環血液中の物質の脳組織への移行を制限している。
これを血液脳関門と呼ぶ。
なお、脈絡叢上皮細胞は、血液脳脊髄液関門の実体である。
関連問題
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◆ 2,4について
2 × 分子量の大きな薬物は、血液脳関門を透過しやすい。
→ ○ 分子量の大きな薬物は、血液脳関門を透過にくい。
4 × 薬物の水溶性が高いほど、単純拡散による脳への移行性は大きい。
→ 〇 薬物の水溶性が高いほど、単純拡散による脳への移行性は小さい。
多くの薬物は、pH分配仮説に従い、単純拡散により血液脳関門を透過する。
よって、分子量が小さく、脂溶性が高い物質ほど、脳への移行性は大きい。
◆ 3について
3 ○ 血液脳関門には種々の栄養物質の輸送系が存在し、一部の薬物はこの輸送系によって脳内へ分布する。
グルコースは、GLIT1を介した促進拡散により脳内に輸送される。
アミノ酸は、物質ごとに異なるトランスポーターを介して脳内に輸送される。
中性アミノ酸トランスポーターのLAT1は、レボドパ,バクロフェン,メルファランなどの脳内移行に関与する。
乳酸,ピルビン酸は、モノカルボン酸トランスポーターにより脳内に輸送される。
モノカルボン酸トランスポーターは、ガバペンチン エナカルビル,ナプロキセン,安息香酸などの脳内移行に関与する。
インスリンやトランスフェリン(鉄輸送タンパク)は、
受容体を介したトランスサイトーシス(膜動輸送)により脳内に輸送される。
◆ 5について
5 ○ 脳毛細血管内皮細胞に存在するP−糖タンパク質は、一部の薬物の脳内移行を妨げている。
P−糖タンパク質(MDR1)は、一次性能動輸送担体の1種であり、
薬物を含む異物を体外に排出するために、物質を細胞内から細胞外へ排出する。
血液脳関門では、P−糖タンパク質は血液側の細胞膜に発現し、
異物を細胞内から血液中へ排出し、異物の脳内への移行を制限している。
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