薬物のリンパ系への移行に関する記述 108回薬剤師国家試験問170

108回薬剤師国家試験 問170
薬物のリンパ系への移行に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 消化管からリンパ系を介して吸収された薬物は、肝初回通過効果を受けずに全身循環系に到達する。
2 リンパ系に移行した薬物は、血液循環系へ移行した薬物に比べてゆっくりと全身に分布する。
3 毛細リンパ管内皮細胞は密着結合を形成しているため、分子量の小さい薬物の方が透過しやすい。
4 皮下投与された抗体医薬品は、リンパ系へ移行しにくい。
5 リンパ系に移行した薬物は、胸管リンパを経て肺動脈に入り、全身循環血を介して体内に分布する。

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108回薬剤師国家試験 問170 解答解説

 

◆ 1,5について
1 ○ 消化管からリンパ系を介して吸収された薬物は、肝初回通過効果を受けずに全身循環系に到達する。

 

5 × リンパ系に移行した薬物は、胸管リンパを経て肺動脈に入り、全身循環血を介して体内に分布する。

 

リンパ系に移行した薬物は、胸管または右リンパ本幹を経て静脈に入るが、
門脈を経ずに全身循環血に入ることになる。
よって、消化管からリンパ系を介して吸収された薬物は、
肝初回通過効果を受けずに全身循環系に到達する。

 

 

◆ 2について
2 ○ リンパ系に移行した薬物は、血液循環系へ移行した薬物に比べてゆっくりと全身に分布する。

 

リンパ液の流速は、血流の1/200〜1/500であり、
1日に1〜2Lのリンパ液が全身を循環している。
よって、リンパ系に移行した薬物は、
血液循環系へ移行した薬物に比べてゆっくりと全身に分布する。

 

 

◆ 3,4について
3 × 毛細リンパ管内皮細胞は密着結合を形成しているため、分子量の小さい薬物の方が透過しやすい。

 

4 × 皮下投与された抗体医薬品は、リンパ系へ移行しにくい。

 

毛細リンパ管内皮細胞は密着結合を形成していない。
毛細リンパ管は、毛細血管に比べて細胞間隙が広いため、より大きな分子が透過できる。
薬物が筋肉内投与や皮下投与などで組織間隙中に投与された場合、
分子量5000以上の薬物は、毛細血管へは移行せず、毛細リンパ管に移行する。
皮下投与された抗体医薬品は、ほとんどがリンパ管から吸収されると考えられている。

 

関連問題
薬物のリンパ系への移行に関する総合問題 96回問153

 

 

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108回問170(e-RECさん)

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