組織への薬物移行に関する記述 93回薬剤師国家試験問153

93回薬剤師国家試験 問153
組織への薬物移行に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。

 

a 皮膚、筋肉、脂肪などの組織では、組織単位質量当たりの血流量が大きいため、一般に血液から組織への薬物移行が速い。

 

b β−ラクタム抗生物質は、脈絡叢を介した能動輸送により、脳脊髄液に移行する。

 

c 脂溶性の高い薬物は、胎盤関門の透過性が高く、胎児に移行しやすい。

 

d プロプラノロールは、血漿タンパク非結合率が増加すると分布容積も増加する。

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93回薬剤師国家試験 問153 解答解説

 

◆ aについて
a × 皮膚、筋肉、脂肪などの組織では、組織単位質量当たりの血流量が大きいため、一般に血液から組織への薬物移行が速い。
→ 〇 皮膚、筋肉、脂肪などの組織では、組織単位質量当たりの血流量が小さいため、一般に血液から組織への薬物移行が遅い。

 

血流量(血流速度)は、薬物の組織移行性に影響を与える要素の1つである。
一般に、組織単位重量あたりの血流量が大きいほど、薬物の組織への移行速度は速い。
腎臓、肝臓、心臓、肺などの脈管系が発達した組織では、組織単位重量あたりの血流量が大きいため、薬物の組織への移行速度は速い。
皮膚、筋肉、脂肪などの脈管系が乏しい組織では、組織単位重量あたりの血流量が小さいため、薬物の組織への移行速度は遅い。

 

 

◆ bについて
b × β−ラクタム抗生物質は、脈絡叢を介した能動輸送により、脳脊髄液に移行する。

 

脳脊髄液中のβ−ラクタム抗生物質は、脈絡叢上皮細胞の脳脊髄液側の細胞膜に存在する有機アニオントランスポーターにより、脳脊髄液から細胞内に取り込まれる。その後、細胞内から血液中に排出される。
このように、β−ラクタム抗生物質は、脳脊髄液への移行が制限されている。

 

 

◆ cについて
c ○ 脂溶性の高い薬物は、胎盤関門の透過性が高く、胎児に移行しやすい。

 

母体血と胎児血の間には、
合胞体性栄養膜細胞(シンシチオトロボプラスト細胞)を実体とする血液胎盤関門が存在し、
薬物の胎児血への移行を制限している。

 

多くの薬物の胎盤関門の透過は、単純拡散により起こり、pH分配仮説に従う。
よって、分子量が小さく、脂溶性が高い薬物ほど、胎盤を透過しやすい。

 

 

◆ dについて
d ○ プロプラノロールは、血漿タンパク非結合率が増加すると分布容積も増加する。

 

非結合形薬物のみ血漿から組織に移行できるので、
血漿タンパク非結合率が増加すると、分布容積は増加すると考えられる。

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