薬物の胎児への移行に関する記述 106回薬剤師国家試験問171
106回薬剤師国家試験 問171
薬物の胎児への移行に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 母体血と胎児血が胎盤内で混ざり合うことで、薬物は母体血から胎児血へ移行する。
2 胎盤にはP-糖タンパク質が発現し、薬物の胎児血への移行を抑制している。
3 胎盤にはシトクロムP450などの薬物代謝酵素が存在しないため、薬物は胎盤で代謝を受けることなく胎児血に移行する。
4 胎盤には母体血中の抗体を胎児に移行させる透過機構が存在しないため、全ての抗体医薬品は胎児血に移行しない。
5 薬物は母体血中でアルブミンと結合した状態では、胎盤を介して胎児血に移行しない。
106回薬剤師国家試験 問171 解答解説
◆ 1について
1 × 母体血と胎児血が胎盤内で混ざり合うことで、薬物は母体血から胎児血へ移行する。
母体から胎児への物質の供給は胎盤を介して行われるが、
母体血と胎児血の間には、合胞体性栄養膜細胞を実体とする血液胎盤関門が存在し、
母体血と胎児血は直接混ざり合わない構造になっている。
◆ 2について
2 ○ 胎盤にはP-糖タンパク質が発現し、薬物の胎児血への移行を抑制している。
血液胎盤関門の合胞体性栄養膜細胞の刷子縁膜側にはP-糖タンパク質が発現し、
薬物を細胞内から母体血中へ排出している。
◆ 3について
3 × 胎盤にはシトクロムP450などの薬物代謝酵素が存在しないため、薬物は胎盤で代謝を受けることなく胎児血に移行する。
胎盤には、シトクロムP450,グルタチオンS-トランスフェラーゼ,スルホトランスフェラーゼなどの薬物代謝酵素が存在している。
◆ 4について
4 × 胎盤には母体血中の抗体を胎児に移行させる透過機構が存在しないため、全ての抗体医薬品は胎児血に移行しない。
胎盤には母体血中のIgGを胎児に移行させる透過機構が存在する。
そのため、IgG由来の抗体医薬品は、胎児血に移行する可能性がある。
◆ 5について
5 ○ 薬物は母体血中でアルブミンと結合した状態では、胎盤を介して胎児血に移行しない。
タンパク結合した薬物は、胎盤関門を透過しない。
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