薬物の脳移行に関する記述 104回薬剤師国家試験問164
104回薬剤師国家試験 問164
薬物の脳移行に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
ただし、血漿と脳組織間で薬物分布が平衡状態にあるものとする。
1 血液脳関門では毛細血管内皮細胞が密着結合で強く連結しているため、薬物が脳移行するためには毛細血管を経細胞的に透過しなければならない。
2 薬物の血漿中非結合形分率の増大は、血漿中薬物濃度に対する脳内薬物濃度の比を上昇させる。
3 単純拡散のみで血液脳関門を透過する薬物では、血漿中非結合形濃度よりも脳内非結合形濃度の方が高くなる。
4 血液脳関門に発現するP-糖タンパク質MDR1は、基質となる薬物の血漿中非結合形濃度に対する脳内非結合形濃度の比を上昇させる。
5 カルビドパは血液脳関門に発現する中性アミノ酸トランスポーターLAT1を介して脳移行する。
104回薬剤師国家試験 問164 解答解説
◆ 1について
1 ○ 血液脳関門では毛細血管内皮細胞が密着結合で強く連結しているため、薬物が脳移行するためには毛細血管を経細胞的に透過しなければならない。
血液脳関門では、脳毛細血管内皮細胞が密着結合で強固に連結しているため、
経細胞間隙的に透過することはできず、経細胞的に透過しなければならない。
◆ 2について
2 ○ 薬物の血漿中非結合形分率の増大は、血漿中薬物濃度に対する脳内薬物濃度の比を上昇させる。
一般に、非結合形薬物のみ、血管の内外を行き来できる。
薬物の血漿中非結合形分率が増大すると、
血漿中から脳内に移行する薬物の量は増える。
◆ 3について
3 × 単純拡散のみで血液脳関門を透過する薬物では、血漿中非結合形濃度よりも脳内非結合形濃度の方が高くなる。
単純拡散のみで血液脳関門を透過する薬物では、
血漿中と脳内との間の分布が平衡状態に達すると、
血漿中非結合形濃度と脳内非結合形濃度は等しくなる。
◆ 4について
4 × 血液脳関門に発現するP-糖タンパク質MDR1は、基質となる薬物の血漿中非結合形濃度に対する脳内非結合形濃度の比を上昇させる。
→ 〇 血液脳関門に発現するP-糖タンパク質MDR1は、基質となる薬物の血漿中非結合形濃度に対する脳内非結合形濃度の比を低下させる。
P-糖タンパク質(MDR1)は、一次性能動輸送担体の1種であり、
薬物を含む異物を体外に排出するために、物質を細胞内から細胞外へ排出する。
血液脳関門の実体である脳毛細血管内皮細胞では、P-糖タンパク質は血液側の細胞膜に発現し、
異物を細胞内から血液中へ排出し、異物の脳内への移行を制限している。
◆ 5について
5 × カルビドパは血液脳関門に発現する中性アミノ酸トランスポーターLAT1を介して脳移行する。
中性アミノ酸トランスポーターLAT1を介して、脳内へ移行するのは、レボドパである。
カルビドパは、脳内には移行せず、末梢において芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼを阻害する薬である。
レボドパとカルビドパを併用することで、末梢でレボドパが脱炭酸されてドパミンに変換されるのを抑制し、脳内に移行するレボドパの量を増加させることができる。
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