薬物の血漿タンパク結合、組織結合及び分布容積に関する記述 103回薬剤師国家試験問168
103回薬剤師国家試験 問168
薬物の血漿タンパク結合、組織結合及び分布容積に関する記述のうち、
誤っているのはどれか。2つ選びなさい。
ただし、定常状態における血漿中非結合形薬物濃度と組織中非結合形薬物濃度は等しいものとする。
1 血漿タンパク結合の変動が分布容積に及ぼす影響は、組織結合性が大きい薬物ほど顕著である。
2 薬物の血漿中濃度に対する組織中濃度の比は、組織中非結合形分率に対する血漿中非結合形分率の比に等しい。
3 体重1kg当たりの分布容積が0.6Lの薬物は、血漿を含む細胞外液に主に分布する。
4 血漿タンパク結合率が著しく高く、組織結合は無視できるほど低い薬物の分布容積は、血漿容積に近似できる。
5 分布容積は、体内薬物量を組織中薬物濃度で除することで得られる。
103回薬剤師国家試験 問168 解答解説
◆ 1,2,4,5について
1 ○ 血漿タンパク結合の変動が分布容積に及ぼす影響は、組織結合性が大きい薬物ほど顕著である。
2 ○ 薬物の血漿中濃度に対する組織中濃度の比は、組織中非結合形分率に対する血漿中非結合形分率の比に等しい。
4 ○ 血漿タンパク結合率が著しく高く、組織結合は無視できるほど低い薬物の分布容積は、血漿容積に近似できる。
5 × 分布容積は、体内薬物量を組織中薬物濃度で除することで得られる。
→ 〇 分布容積は、体内薬物量を血漿中薬物濃度で除することで得られる。
体内全薬物量をX、薬物の血漿中濃度をCpとすると、
分布容積(Vd)は、次式で表される。
体内全薬物量(X)は、次式で表される。
X = Xp + Xt
Xp:血漿中薬物量
Xt:組織中薬物量
血漿中薬物量(Xp)は、次式で表される。
Xp = Cp・Vp
Cp:薬物の血漿中濃度
Vp:血漿容積
組織中薬物量(Xt)は、次式で表される。
Xt = Ct・Vt
Ct:薬物の組織中濃度
Vt:組織容積
以上より、
体内全薬物量(X)は、次式で表される。
X = Cp・Vp + Ct・Vt
Cp:薬物の血漿中濃度 Vp:血漿容積
Ct:薬物の組織中濃度 Vt:組織容積
したがって、
分布容積(Vd)は、次式で表される。
ここで、非結合形薬物のみ、血管の内外を行き来でき、
定常状態における血漿中非結合形薬物濃度と組織中非結合形薬物濃度は等しいものとすると、
次式が成り立つ。
fp・Cp = ft・Ct
fp:血漿非結合型分率 Cp:薬物の血漿中濃度
ft:組織非結合型分率 Ct:薬物の組織中濃度
上式より、次のA式が成り立つ。
よって、選択肢2の記述通り、
薬物の血漿中濃度に対する組織中濃度の比は、
組織中非結合形分率に対する血漿中非結合形分率の比に等しいといえる。
A式を@式に代入する。
B式より、ft(組織非結合型分率)が小さいほど、
fp(血漿非結合型分率)の変動が分布容積に及ぼす影響は大きくなる。
したがって、選択肢1の記述通り、
血漿タンパク結合の変動が分布容積に及ぼす影響は、
組織結合性が大きい薬物ほど顕著であるといえる。
また、B式より、
fp(血漿非結合型分率)が著しく小さく、
ft(組織非結合型分率)が著しく大きい薬物の分布容積は、
血漿容積(Vp)に近似できる。
したがって、選択肢4の記述通り、
血漿タンパク結合率が著しく高く、
組織結合は無視できるほど低い薬物の分布容積は、
血漿容積に近似できるといえる。
◆ 3について
3 × 体重1kg当たりの分布容積が0.6Lの薬物は、血漿を含む細胞外液に主に分布する。
→ 〇 体重1kg当たりの分布容積が0.6Lの薬物は、全体液中に分布する。
成人の全体液量は、体重の約60%(0.6L/kg)である。
全体液は、細胞内液と細胞外液から成る。
したがって、体重1kg当たりの分布容積が0.6L(0.6L/kg)の薬物は、
全体液中に分布すると考えられる。
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