薬物の組織移行に関する記述 97回薬剤師国家試験問168

97回薬剤師国家試験 問168
薬物の組織移行に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
1 皮膚、筋肉、脂肪などの組織では、組織単位重量あたりの血流量が小さいために、一般に血液から組織への薬物移行が遅い。
2 脈絡叢では上皮細胞どうしが強固に結合し、血液脳脊髄液関門を形成している。
3 分子量5000以下の薬物は、筋肉内投与後、リンパ系に選択的に移行する。
4 組織結合率が同じ場合、血漿タンパク結合率が低い薬物に比べ高い薬物の分布容積は大きい。

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97回薬剤師国家試験 問168 解答解説

 

◆ 1について
1 ○ 皮膚、筋肉、脂肪などの組織では、組織単位重量あたりの血流量が小さいために、一般に血液から組織への薬物移行が遅い。

 

血流量(血流速度)は、薬物の組織移行性に影響を与える要素の1つである。
一般に、組織単位重量あたりの血流量が大きいほど、薬物の組織への移行速度は速い。
腎臓、肝臓、心臓、肺などの脈管系が発達した組織では、組織単位重量あたりの血流量が大きいため、薬物の組織への移行速度は速い。
皮膚、筋肉、脂肪などの脈管系が乏しい組織では、組織単位重量あたりの血流量が小さいため、薬物の組織への移行速度は遅い。

 

 

◆ 2について
2 ○ 脈絡叢では上皮細胞どうしが強固に結合し、血液脳脊髄液関門を形成している。

 

脈絡叢では、脈絡叢上皮細胞同士が密着結合により強固に結合し、
血液から脳脊髄液への物質の移行を制限している。
これを、血液脳脊髄液関門と呼ぶ。

 

関連問題
β−ラクタム抗生物質の脳脊髄液への移行性 93回問153b

 

 

◆ 3について
3 × 分子量5000以下の薬物は、筋肉内投与後、リンパ系に選択的に移行する。
→ 〇 分子量5000以下の薬物は、筋肉内投与後、血管に移行しやすい

 

毛細リンパ管内皮細胞は密着結合を形成していない。
そのため、毛細リンパ管は、毛細血管に比べて細胞間隙が広く、より大きな分子が透過できる。
薬物が筋肉内投与や皮下投与などで組織間隙中に投与された場合、
分子量5000以下の薬物は、毛細リンパ管よりも毛細血管に移行しやすく、
分子量5000以上の薬物は、毛細血管へは移行せず、毛細リンパ管に移行する。

 

 

◆ 4について
4 × 組織結合率が同じ場合、血漿タンパク結合率が低い薬物に比べ高い薬物の分布容積は大きい。
→ 〇 組織結合率が同じ場合、血漿タンパク結合率が低い薬物に比べ高い薬物の分布容積は小さい。

 

血漿タンパクに結合した薬物は、血漿から組織へ移行できない。
よって、薬物の組織結合率が同じ場合、血漿タンパク結合率が高いほど、組織に移行しにくいため、分布容積は小さい。

 

 

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