リンパ系への薬物移行に関する記述 91回薬剤師国家試験問155
91回薬剤師国家試験 問155
リンパ系への薬物移行に関する記述のうち、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a リンパ系へ移行した薬物は、血液循環系へ移行した薬物に比べて速やかに全身へ分布する。
b リンパ管の内皮細胞では、その間隙が大きく開いているところがあるため、血管に比べて分子量の大きな物質が透過しやすい。
c 消化管からリンパ系を介して吸収された薬物は、肝初回通過効果を受ける。
d 消化管から脂溶性の高い薬物が吸収された場合、リンパ系に移行しやすい。
91回薬剤師国家試験 問155 解答解説
◆ aについて
a × リンパ系へ移行した薬物は、血液循環系へ移行した薬物に比べて速やかに全身へ分布する。
→ 〇 リンパ系へ移行した薬物は、血液循環系へ移行した薬物に比べてゆっくりと全身へ分布する。
リンパ液の流速は、血流の1/200〜1/500であり、
1日に1〜2Lのリンパ液が全身を循環している。
よって、リンパ系に移行した薬物は、
血液循環系へ移行した薬物に比べてゆっくりと全身に分布する。
◆ bについて
b ○ リンパ管の内皮細胞では、その間隙が大きく開いているところがあるため、血管に比べて分子量の大きな物質が透過しやすい。
毛細リンパ管内皮細胞は密着結合を形成していない。
毛細リンパ管は、毛細血管に比べて細胞間隙が広いため、より大きな分子が透過できる。
薬物が筋肉内投与や皮下投与などで組織間隙中に投与された場合、
分子量5000以下の薬物は、毛細リンパ管よりも毛細血管に移行しやすく、
分子量5000以上の薬物は、毛細血管へは移行せず、毛細リンパ管に移行する。
皮下投与された抗体医薬品は、ほとんどがリンパ管から吸収されると考えられている。
◆ c,dについて
c × 消化管からリンパ系を介して吸収された薬物は、肝初回通過効果を受ける。
→ 〇 消化管からリンパ系を介して吸収された薬物は、肝初回通過効果を受ける。
d ○ 消化管から脂溶性の高い薬物が吸収された場合、リンパ系に移行しやすい。
脂溶性の高い薬物が小腸から吸収された場合、小腸でキロミクロンに取り込まれ、リンパ管に移行しやすい。
小腸からリンパ系に移行した薬物は、胸管を経て静脈に入るが、
門脈を経ずに全身循環血に入ることになる。
よって、消化管からリンパ系を介して吸収された薬物は、
肝初回通過効果を受けずに全身循環系に到達する。