薬物の分布に関する記述 90回薬剤師国家試験問155

90回薬剤師国家試験 問155
薬物の分布に関する記述の正誤について、正しいものはどれか。2つ選びなさい。
a 血液脳関門を介した薬物の脳内移行については、水溶性が高い薬物ほど、脳へ移行しやすい。
b 分子量5000以上の薬物は皮下注射すると、分子量が大きいため血管内皮細胞の間隙を通過しにくく、一部はリンパ系に移行する。
c 経口投与では、一般に薬物は血管系へ移行するが、脂溶性ビタミンのビタミンAなどはリンパ系に移行する。
d 薬物の組織結合が大きいほど、分布容積は小さくなる。

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90回薬剤師国家試験 問155 解答解説

 

◆ aについて
a × 血液脳関門を介した薬物の脳内移行については、水溶性が高い薬物ほど、脳へ移行しやすい。
→ 〇 血液脳関門を介した薬物の脳内移行については、脂溶性が高い薬物ほど、脳へ移行しやすい。

 

多くの薬物は、pH分配仮説に従い、単純拡散により血液脳関門を透過する。
よって、分子量が小さく、脂溶性が高い物質ほど、脳への移行性は大きい。

 

 

◆ bについて
b ○ 分子量5000以上の薬物は皮下注射すると、分子量が大きいため血管内皮細胞の間隙を通過しにくく、一部はリンパ系に移行する。

 

毛細リンパ管内皮細胞は密着結合を形成していない。
そのため、毛細リンパ管は、毛細血管に比べて細胞間隙が広く、より大きな分子が透過できる。
薬物が筋肉内投与や皮下投与などで組織間隙中に投与された場合、
分子量5000以下の薬物は、毛細リンパ管よりも毛細血管に移行しやすく、
分子量5000以上の薬物は、毛細血管へは移行せず、毛細リンパ管に移行する。

 

 

◆ cについて
c ○ 経口投与では、一般に薬物は血管系へ移行するが、脂溶性ビタミンのビタミンAなどはリンパ系に移行する。

 

脂溶性の極めて高い物質は、小腸でキロミクロンに取り込まれ、リンパ管に移行する。

 

 

◆ dについて
d × 薬物の組織結合が大きいほど、分布容積は小さくなる。
→ 〇 薬物の組織結合が大きいほど、分布容積は大きくなる。

 

薬物が組織や細胞内小器官の成分と強く結合し、蓄積しやすいほど、
分布容積は大きくなり、
みかけの分布容積が総体液量を大きく超える薬物もある。
アミオダロンは、脂溶性が高く脂肪組織に蓄積しやすいため、
分布容積は約4000Lである。
ジゴキシンは、Na,K-ATPaseに強く結合し、
骨格筋や心筋に分布しやすいため、分布容積は約500Lである。
プロプラノロール,イミプラミン,キニジンなどの塩基性薬物は、
細胞膜のホスファチジルセリン等のリン脂質と静電的に結合するため、分布容積が大きい。

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