薬物の乳汁移行に関する記述 103回薬剤師国家試験問195

103回薬剤師国家試験 問195
薬物の乳汁移行に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選びなさい。
1 母乳pHは血漿pHよりも高値であるため、塩基性薬物は母乳中に移行しやすい。
2 相対的乳児摂取量は、薬物の乳汁中濃度と母体血漿中濃度の比に100を乗じて算出する。
3 乳汁/血漿中薬物濃度比(M:P比)に影響を及ぼす要因として、薬物の脂溶性、分子量、タンパク結合率、pKaがある。
4 ブロモクリプチンは、母乳中への移行が多い。
5 炭酸リチウムは、母乳中へ移行するが、服薬と授乳のタイミングを工夫することで、授乳婦への投与は可能である。

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103回薬剤師国家試験 問195 解答解説

 

◆ 1,3について
1 × 母乳pHは血漿pHよりも高値であるため、塩基性薬物は母乳中に移行しやすい。
→ 〇 母乳pHは血漿pHよりも低値であるため、塩基性薬物は母乳中に移行しやすい。

 

3 ○ 乳汁/血漿中薬物濃度比(M:P比)に影響を及ぼす要因として、薬物の脂溶性、分子量、タンパク結合率、pKaがある。

 

薬物の乳汁中移行性の指標の1つとして、
乳汁/母体血漿中薬物濃度比(M:P比:milk-to-plasma concentration ratio)がある。
M:P比が大きいほど、薬物が乳汁中へ移行しやすいことを示し、
M:P比が1より小さい場合は乳汁中への移行率は小さく、
M:P比が1より大きい場合は乳汁中への移行率は大きいと考えられる。

 

薬物の母体の血液から乳汁への移行は、
主に線上皮細胞を単純拡散により透過することで起こり、
pH分配仮説に従うと考えられている。
よって、分子量が小さく、脂溶性が高い薬物ほど乳汁へ移行しやすい。
また、脂溶性が高いほど、乳汁中の脂肪滴に取り込まれやすくなるので、
乳汁へ移行しやすくなる。

 

血漿から乳汁に移行するのは非結合型薬物であるので、
血漿タンパク結合率が低いほど、乳汁へ移行しやすい。

 

血漿中で分子形となった薬物が乳汁へ移行するが、
乳汁は弱酸性であるため、塩基性薬物は乳汁中に移行するとイオン形になりやすく、
イオン形になると血漿に戻れなくなるので、
塩基性薬物は酸性薬物よりも乳汁中への移行性が高い。
よって、血漿中で分子形になりやすく、
乳汁中でイオン形になりやすいpKaの弱塩基性薬物は、
乳汁へ移行しやすい。

 

 

◆ 2について
2 × 相対的乳児摂取量は、薬物の乳汁中濃度と母体血漿中濃度の比に100を乗じて算出する。
→ 〇 相対的乳児摂取量は、薬物の乳児摂取量と母親摂取量の比に100を乗じて算出する。

 

薬物の乳汁中移行性,および,乳児に対する薬物の影響の指標の1つとして、
相対的乳児摂取量(relative infant dose:RID)がある。
RIDは次式で計算される。

 

103回薬剤師国家試験問195 薬物の乳汁移行に関する記述のうち、正しいのはどれか

 

一般に、薬物のRIDが10%以下なら安全であり、
服薬しながら授乳可能とされる。

 

 

◆ 4について
4 × ブロモクリプチンは、母乳中への移行が多い。

 

ブロモクリプチンは、母乳中への移行は認められていない。
ただし、ブロモクリプチンは、脳下垂体のドパミンD2受容体を刺激し、
プロラクチンの分泌を抑制するため、乳汁分泌を抑制する。
そのため、ブロモクリプチン(パーロデル)は、添付文書の授乳婦の項において、
「授乳を望む母親には投与しないこと」と記載されている。

 

 

◆ 5について
5 × 炭酸リチウムは、母乳中へ移行するが、服薬と授乳のタイミングを工夫することで、授乳婦への投与は可能である。

 

炭酸リチウム(リーマス)を服薬中は、授乳できない。
炭酸リチウムの添付文書の授乳婦の項において、以下の記載がある。
「授乳を避けさせること。ヒトで母乳を介した児への移行が確認されている。
母乳栄養児の血清リチウム濃度は母親の1/3 から1/2 であったとの報告がある。
母乳を介したリチウム曝露により、
児にチアノーゼ、嗜眠、心電図T波逆転などのリチウム中毒の兆候があらわれたとの報告がある(海外症例)。」

 

関連問題
薬物の乳汁移行性に関する問題 101回問42

 

 

★ 他サイトさんの解説リンク
103回問195(e-RECさん)

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