表面張力と正吸着・負吸着 102回薬剤師国家試験問172

102回薬剤師国家試験 問172
以下のア、イ、ウで示される物質を様々な濃度で水に溶解し、一定温度下で濃度と表面張力の関係を調べたところ、下図に示すT、U、Vのようになった。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。

 

表面張力と正吸着・負吸着 102回薬剤師国家試験問172

 

1 曲線Tを示す物質は「ア」である。
2 曲線Tにおいて、C1より高い濃度では水相表面における物質の濃度(吸着量)は飽和して一定である。
3 曲線を示す物質は「ウ」である。
4 曲線T、Uのように右下がりの曲線となるような物質の水相表面への吸着様式を正吸着という。
5 曲線を示す物質は「イ」であり、水中より水相表面の濃度が低くなる。

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102回薬剤師国家試験 問172 解答解説

 

表面張力と正吸着・負吸着 102回薬剤師国家試験問172

 

1 × 曲線Tを示す物質は「ア」である。
→ 〇 曲線Tを示す物質は「イ:CH 3(CH 2) 10CH 2OSO 3Na」である。
界面活性剤が溶質の場合、溶液の表面張力はTのようなグラフになる。

 

 

2 〇 曲線Tにおいて、C1より高い濃度では水相表面における物質の濃度(吸着量)は飽和して一定である。
C1は界面活性剤のミセル形成が始まる濃度であり、これを臨界ミセル濃度と呼ぶ。
ミセルが形成される時には水相表面の界面活性剤の量は飽和状態であるので、臨界ミセル濃度以上では水相表面の界面活性剤濃度(吸着量)は一定となる。

 

3 × 曲線Uを示す物質は「ウ」である。
→ 〇 曲線Uを示す物質は「ア:CH 3(CH 2) 2OH」である。
アルコールや脂肪酸が溶質の場合、溶液の表面張力はUのようなグラフになる。

 

4 〇 曲線T、Uのように右下がりの曲線となるような物質の水相表面への吸着様式を正吸着という。

 

溶液内部よりも水相表面の方が溶質濃度が高くなることを正吸着と呼ぶ。
正吸着を起こす場合、溶液の表面張力は溶質の濃度上昇と共に低下する。

 

 

5 × 曲線Vを示す物質は「イ」であり、水中より水相表面の濃度が低くなる。
→ 〇 曲線Vを示す物質は「ウ」であり、水中より水相表面の濃度が低くなる。

 

NaClのような電解質が溶質の場合、溶質のイオンは表面よりも溶液内部に多く存在し、表面の溶質濃度は内部よりも低くなる。これを負吸着と呼ぶ。
負吸着を起こす溶質の溶液では、表面張力は溶質の濃度上昇と共に少しずつ大きくなる。

 

 

★ 溶液の表面張力と溶質の種類
NaClなどの電解質が溶質の場合、電解質が解離して生成したイオンに水が強く水和することから、電解質イオンは表面よりも溶液内部に多く存在し、表面の溶質濃度は内部よりも低くなる。これを負吸着と呼ぶ。
負吸着を起こす溶質の溶液では、表面張力は溶質の濃度上昇と共に少しずつ大きくなる。

 

アルコールや脂肪酸が溶質の場合、疎水性の炭化水素基は水中よりも表面にいる方が安定なため、
溶液内部よりも表面の方が溶質濃度は高くなる。これを正吸着と呼ぶ。
正吸着を起こす溶質の溶液では、表面張力は溶質の濃度上昇と共に小さくなる。
正吸着を起こして表面張力を低下させる性質を界面活性であるという。

 

界面活性剤は分子内に親水性基と疎水性基(親油性基)の両方を持つが、
疎水性の炭化水素基が大きいため、特に水溶液の表面に集まりやすく、少量で表面張力を大きく低下させる。

 

表面張力と正吸着・負吸着 102回薬剤師国家試験問172

 

 

★ 界面活性剤の表面への吸着とミセル形成

 

溶液の界面活性剤の濃度上昇に対する分子の動向は下記の通り。

 

表面張力と正吸着・負吸着 102回薬剤師国家試験問172

 

★ 他サイトさんの解説リンク
102回問172(e-RECさん)

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