拡張ぬれ,浸透ぬれ,付着ぬれと接触角 86回薬剤師国家試験問169
86回薬剤師国家試験 問169
固体平面に液滴を置いた場合を図示してある。γs、γL、γSLをそれぞれ、固体―気体、液体―気体、固体―液体の界面張力とする。このとき、次の記述について、正しいものはどれか。
a 角度Aが接触角で、小さいほどぬれやすいことを示す。
b 角度Bが接触角で、小さいほどぬれやすいことを示す。
c 接触角が0度のとき、拡張ぬれが起こる。
d 接触角が0度より大きく90度以下のとき、付着ぬれが起こる。
e 接触角が90度より大きく180度以下のとき、浸漬ぬれが起こる。
86回薬剤師国家試験 問169 解答解説
ぬれとは、固体−気体界面に液体が接触し、固体−気体界面が固体−液体界面に置き換わる現象である。
◆ a,bについて
a 〇 角度Aが接触角で、小さいほどぬれやすいことを示す。
b × 角度Bが接触角で、小さいほどぬれやすいことを示す。
図の角度Aが接触角である。
ぬれの平衡状態では各界面張力と接触角θについて次のヤングの式が成り立つ。
γS = γSL + γL・cosθ
以下に示す通り、
接触角が小さいほど、液体が固体表面を広がる範囲が広くなる。
よって、接触角が小さいほどぬれやすいことを示す。
◆ c,d,eについて
c 〇 接触角が0度のとき、拡張ぬれが起こる。
d × 接触角が0度より大きく90度以下のとき、付着ぬれが起こる。
→ 〇 付着ぬれは接触角θが0°≦θ<180°の範囲で起こる。
e × 接触角が90度より大きく180度以下のとき、浸漬ぬれが起こる。
→ 〇 浸漬ぬれは接触角θが0°≦θ<90°の範囲で起こる。
ぬれは、拡張ぬれ、浸透ぬれ(浸漬ぬれ)、付着ぬれの3種類に分類される。
・拡張ぬれ
拡張ぬれは下の図のように接触角0°で固体表面を液体が広がる場合である。
拡張ぬれのギブズエネルギー変化(凾f拡張)は次式で表される。
僭拡張 = γSL + γL − γS
ヤングの式:γS = γSL + γL・cosθ より、
僭拡張 = γL(1− cosθ)
これより、拡張ぬれに伴う仕事(W 拡張)は、
W 拡張 = −γL(1− cosθ)で表される。
・浸透ぬれ(浸漬ぬれ)
浸透ぬれ(浸漬ぬれ)とは、下の図のように液体が固体表面を毛細管現象でぬらす場合である。
浸透ぬれ(浸漬ぬれ)は接触角θが0°≦θ<90°の範囲で起こる。
浸透ぬれのギブズエネルギー変化(凾f浸透)は次式で表される。
僭浸透 = γSL − γS
ヤングの式:γS = γSL + γL・cosθ より、
僭浸透 = −γL・cosθ
これより、浸透ぬれに伴う仕事(W 浸透)は、
W浸透 = γL・cosθ
で表される。
・付着ぬれ
付着ぬれは接触角θが0°≦θ<180°の範囲で起こり、固体表面に液体が付着するぬれである。
付着ぬれのギブズエネルギー変化(凾f付着)は次式で表される。
僭付着 = γSL − (γS + γL)
ヤングの式:γS = γSL + γL・cosθ より、
僭付着 = −γL(cosθ + 1)
これより、付着ぬれに伴う仕事(W 付着)は、
W付着 = γL(cosθ + 1)
で表される。