表面吸着量・表面張力とGibbsの吸着等温式 87回薬剤師国家試験問20
87回薬剤師国家試験 問20
図に示された水溶液の表面張力(γ)−濃度(C)曲線と式(1)のGibbsの吸着等温式に関する記述のうち,正しいものはどれか。
ただし,Γは溶質の表面過剰吸着量,Rは気体定数,Tは絶対温度である。
a I型溶液では,Γ>0となり,正吸着といわれる。
b U型溶液では,Γ<0となり,正吸着といわれる。
c V型溶液では,Γ>0となり,正吸着といわれる。
d T型溶液ではΓ<0であり,その例は電解質溶液で,その表面は真水に近い。
e U型の溶液では,Γ>0であり,その例は界面活性剤である。
87回薬剤師国家試験 問20 解答解説
◆ a,dについて
a × I 型溶液では,Γ>0となり,正吸着といわれる。
→ 〇 I 型溶液では,Γ<0となり,負吸着といわれる。
d 〇 I 型溶液ではΓ<0であり,その例は電解質溶液で,その表面は真水に近い。
Gibbsの吸着等温式について、
dγ/dCは濃度変化に対する表面張力の変化であるが、
これは図の曲線の接線の傾きである。
T型溶液の曲線の接線の傾きは正なので(dγ/dC>0)、
Gibbsの吸着等温式より溶質の表面過剰量は負となる(Γ<0)。
dγ/dC>0は溶質濃度の上昇に対して溶液の表面張力が上昇することを示すが、
このことは、溶液の溶質量を増やすと、溶質は表面よりも溶液内部に向かうことを示す。
これを負吸着と呼ぶ。
T型溶液の例として、電解質溶液が挙げられる。
◆ b,eについて
b × U型溶液では,Γ<0となり,正吸着といわれる。
→ 〇 U型溶液では,Γ>0となり,正吸着といわれる。
e × U型の溶液では,Γ>0であり,その例は界面活性剤である。
→ 〇 U型の溶液では,Γ>0であり,その例はアルコール,脂肪酸である。
U型溶液の曲線の接線の傾きは負なので(dγ/dC<0)、
Gibbsの吸着等温式より溶質の表面過剰量は正となる(Γ>0)。
dγ/dC<0は溶質濃度の上昇に対して溶液の表面張力が低下することを示すが、
このことは、溶液の溶質量を増やすと、溶質は溶液内部よりも表面に向かうことを示す。
U型溶液の例として、アルコールや脂肪酸が挙げられる。
◆ cについて
c 〇 V型溶液では,Γ>0となり,正吸着といわれる。
V型溶液の曲線の接線の傾きは負なので(dγ/dC<0)、
Gibbsの吸着等温式より溶質の表面過剰量は正となる(Γ>0)。
よって、V型溶液の溶質は正吸着を起こす。
V型溶液では、溶質濃度の上昇に対して表面張力が急激に低下するが、これは界面活性剤溶液の特徴である。