粉末X線回折パターンと結晶性の判断 104回薬剤師国家試験問173
104回薬剤師国家試験 問173
ある固体薬物Aに粉砕や再結晶などの処理を行ったところ、
下図の粉末X線回折パターンを示す固体a、b、cが得られた。
別の方法で再結晶を行ったところ、異なる回折パターンを示す固体dが得られた。
次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選びなさい。
ただし、粉末X線回折測定に必要な前処理により、薬物Aの化学変化や固体組成の変化は生じないものとする。
1 固体a〜dの回折パターンを比較することにより、それぞれの結晶の外観の相違を判断できる。
2 固体aと固体bの回折パターンを比較することにより、固体aの水分量は固体bより多いことが判断できる。
3 固体aと固体dの回折パターンから、両者の結晶の単位格子の大きさが異なっていることが判断できる。
4 固体bと固体dは、結晶多形の関係にあると判断できる。
5 固体cの回折パターンから、本品の結晶性は著しく低いことが判断できる。
104回薬剤師国家試験 問173 解答解説
◆ 1について
1 × 固体a〜dの回折パターンを比較することにより、それぞれの結晶の外観の相違を判断できる。
2 × 固体aと固体bの回折パターンを比較することにより、固体aの水分量は固体bより多いことが判断できる。
粉末X線回折測定法は結晶、結晶多形及び溶媒和結晶の同定、判定、定量、結晶化度の評価などに用いることができるが、結晶の外観の相違は判断できない。
また、粉末X線回折測定法は温度変化に伴う水和物結晶の相転位による脱水挙動を把握することは可能だが、
水分量の判断はできない。
水分量の評価法として熱重量測定法やカールフィッシャー法などがある。
◆ 3について
3 × 固体aと固体dの回折パターンから、両者の結晶の単位格子の大きさが異なっていることが判断できる。
粉末X線回折パターンより、試料の結晶構造の相違を判断できる。
下記のリンク先を参照
粉末X線回折測定法での結晶多形の確認 91回問24b
固体aと固体dの回折パターンを見比べると、
両者のピークの位置が同じ(回折角度が同じ)であることから、
固体aと固体dの結晶構造は同じであり、
単位格子の大きさは同じだと判断できる。
◆ 4について
4 〇 固体bと固体dは、結晶多形の関係にあると判断できる。
固体bと固体dはピークの位置が同じ(回折角度が同じ)なので、
互いに結晶構造が異なり、互いに結晶多形の関係にあると判断できる。
◆ 5について
5 〇 固体cの回折パターンから、本品の結晶性は著しく低いことが判断できる。
cの回折パターンをハローパターンと呼び、
これは分子の配列に規則性がない非晶質や結晶性の著しく低下した試料であることを示す。
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104回問173(e-RECさん)